金 - 2 月 15, 2008

学業総決算の2日間


修士論文の発表会が2月14日に、卒業論文のポスター発表が15日に行われました。 学生の皆さんにとって、6年間あるいは4年間の学業の集大成。どれも立派なものです…というのは単にお世辞でなく、自分が卒業研究や修論をやっつけ仕事で作り上げたのに比べると、なんと水準の高い研究をしているかと、正直言って驚きです。細かい部分に手を入れて英語にすれば、そのまま投稿論文になりますよ(いくつかの修論はオリジナルが英語で、わざわざ日本語にしたものです)。目的意識を持って自発的に研究できる学生に対して教員ができることは、「邪魔をしないこと」だけですね。嬉しい限りです。

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火 - 8 月 28, 2007

桜島と皆既月食 


桜島と皆既月蝕
6年振りの皆既月蝕だそうで、大学の屋上から研究室のメンバーと一緒に眺めてみました。時間の経過とともに色が複雑に変わっていく月面は興味深いものです。皆既中の月に4.8等のみずがめ座σ星が隠される(掩蔽)も見ることができて感激。2時間に亘ってたっぷりと天文ショーを堪能しました。興味のあるかたは、こちらの写真アルバム をお楽しみ下さい。

 

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木 - 8 月 23, 2007

サイエンス・パートナーシップ・プロジェクトの4日間 


N県立Y高校の生徒32名を迎えて、3泊4日の日程で「宇宙科学観測実習 」を実施しました。科学技術振興機構が支援するサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)事業です。電波望遠鏡で観測したスペクトルや、光赤外線望遠鏡で撮影した多色測光といった天文学の観測データは、高校生にとっては馴染みのないもので、最初は戸惑っているのも当然。でも、これを手がかりにして電波を出している天体のサイズを見積もったり、星の温度を計算したり、星団の年齢や距離を手探りで導き出していく過程は、刺激的だったようです。TA(ティーチング・アシスタント)の皆さん、お疲れさまでした。

 

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火 - 7 月 17, 2007

FMラジオ出演告知 


明日7月18日にK-MIXCaramel Pocket 」番組内で、電話インタビューを受けることになりました。10h12mから5分間ほどの出演だそうです。内容は、「VERAによる天体精密距離測定 」について分かりやすく説明してほしいとのこと。難しいことを簡単に話すのは難しいなぁ。 

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木 - 3 月 15, 2007

南十字とりゅうこつ座 






Alice Springsは沙漠の中にある小さな街で、光害の影響も少なく、満天の星空を楽しむことができます。カメラを地面に置いて適当に撮った写真がこちら。これでも南十字星(左側)とりゅうこつ座のエータカリーナ星雲が写っています。 

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土 - 3 月 3, 2007

桜島から昇る月 


Lunar Ascension
ふと振り向いて研究室の窓から眺めた景色。噴煙を上げる桜島からぽっかりと月が昇ってくるところで、しばらく見入ってしまいました。ほっと一息、コーヒーでも淹れようかな。

 

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火 - 12 月 19, 2006

屋上から眺める衛星打ち上げ 


技術試験衛星「きく8号」を載せたH-IIA 11号機が種子島宇宙センターから無事に打ち上げ成功。鹿児島市からでも見えるそうなので、みんなで屋上に登って見守ることにしました。15h32mに南の彼方から、噴煙を上げて上昇してゆく炎を見ることができて感激。やがて青空に溶けてゆくまで見送ることができました。
「きく8号」は静止軌道上で19×17mという大型のパラボラアンテナを2翼展開する予定で、成功すればもちろん世界初の快挙。このアンテナ展開機構は、私たちが2012年に打ち上げようと準備を進めているASTRO-G衛星でも採用している仕組みですので、成否がとても重要な意味を持ちます。アンテナ展開は12月25日の予定。ビッグなクリスマスプレゼントを心待ちにしています。 

Posted at 04:54 AM     コメントを読む/書く

日 - 11 月 12, 2006

太陽を見るのは危険です 


入来局で運用当番。アンテナの位置を測定する測地観測のスケジュールが自動的に流れるのを見守るだけの、楽な当番だ。ところが、朝になって突然信号レベルが過大で振り切れる警告が発生する。アンテナを見ると、副鏡の影が鏡面の中心に当たっていることから、太陽のすぐ近くの方向を向いていることがわかる。太陽の強烈な輻射を浴びて、受信機が飽和してしまったのだ。この日の太陽の方向は、スケジュールにある電波源からわずか0.75°しか離れていない。太陽の視半径が0.25°だから、その3倍しか離れていない。こんな条件では意味のあるデータは得られないし、第一入力レベルが過大で機器にダメージがあるかも知れないので危険だ。すぐに中央制御室(岩手県にあります)に電話連絡して、受信機保護のため電波吸収帯を挿入してもらった。
どうしてこの観測責任者はスケジュールを作る段階で太陽角のチェックをしておかないのだろう。「望遠鏡で直接太陽を覗かないこと」なんて、天文観測の基本的な安全事項なのに…チェックせずに前回のスケジュールをコピーして日付だけを変更したのだろうな。太陽の位置は日によって変わるから、コピーするだけでなくチェックを新たにやらなくてはいけないのに。
この影響かどうか分かりませんが、観測終了後に雑音温度を測定しようとすると、パワーメーターという電力計測センサーが壊れていました。この観測の開始前には正常に動作していたのですけどね。センサーが使えないと、正しく電波の強度を計測することがかなり面倒になります。破損したセンサーの交換だって手間がかかることです。安全に関わることで手を抜くと、却って面倒が増えるという、よい教訓ですね。 

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月 - 11 月 6, 2006

スペクトル線解析の師匠 


台湾から共同研究者のSSSさんが来鹿されました。2週間にわたって滞在され、データ解析の先達として学生や私に教えてくれるとのこと。有り難いことです。なのに、私の方が講義とか非常勤講師の応接とか人に言えない会議とかで、丸一日棒に振ってしまった。もったいないなぁ。こんなことでは2週間なんてあっという間だから、何とか追いつかなくては。 

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水 - 10 月 4, 2006

ノーベル物理学賞にまたも電波天文学 


今年度のノーベル物理学賞 が発表された。COBE衛星 で宇宙背景放射のスペクトルを高精度に測定したJohn Cromwell Mather博士と、宇宙背景放射の温度ゆらぎを初めて検出したGeorge Fitzgerald Smoot博士の二人に授賞されることになった。おめでとうございます。

■宇宙背景放射とは
ビッグバン宇宙論の証拠です。宇宙は誕生時には非常にエネルギー密度が高く、放射で満ちあふれる「火の玉」状態でした。宇宙が膨張するにつれ火の玉は冷え、ビッグバンから約40万年後には3000℃にまで冷えます。この温度になると放射より物質のエネルギー密度が卓越し、電離状態にあったプラズマは結合して水素原子になり、宇宙は晴れ上がります。この、火の玉と晴れ上がりの境界を見ているのが、宇宙背景放射です。宇宙背景放射は約3000℃の火の玉なのですが、私たちは宇宙膨張によって遠ざかりつつある宇宙背景放射を見ているので、赤方偏移 (z=1088) によって見かけの温度は1/1089に低下し、2.7 K (摂氏マイナス270℃)の放射に見えます。宇宙背景放射はGeorge Gamowらによって予言され、1964年にArno PenziasとRobert Wilsonによって電波望遠鏡で発見されました(1978年のノーベル物理学賞)。

■COBEの発見の何がすごいのか
・宇宙背景放射のスペクトルが、黒体放射のスペクトルとピッタリ一致することが示されました。ビッグバン宇宙論を強く支持する結果です。
・スペクトルから温度が測定されます。これが、どの方向でもほぼ2.7 Kと、「一様・等方」の宇宙原理を支持します。
・ほぼ一様な背景放射ですが、10万分の1度程度の「ムラ」が見つかりました。このムラは、宇宙晴れ上がりの時点において物質の密度がわずかに濃い場所と薄い場所との差を表しています。密度が濃い場所は僅かに重力が大きいので周囲から物質が引力で集まり、さらに密度が高くなります。こうして密度の「ゆらぎ」が成長していくと、やがて最初の星が誕生します。COBEが発見した宇宙背景放射の温度ゆらぎは、天体の「種」の発見なのです。
・COBEの成果をふまえて、2001年にWMAP衛星が打ち上げられました。WMAPは宇宙背景放射の温度ゆらぎをより細かい解像度で観測し、宇宙の年齢が137億年であること、宇宙のエネルギーのうち通常の物質はわずかに4%しか存在せず、73%はダークエネルギー, 23%はダークマターが占めていること、ダークエネルギーのせいで宇宙膨張はどんどん加速していること、などを明らかにしました。COBEは現代の観測的宇宙論にブレークスルーをもたらしたと言えましょう。

■電波天文学のノーベル賞に新たな金字塔
今回の受賞は、電波天文学で5件目です。
・電波干渉計の開発による天体物理学の進展、電波銀河の正体の解明 (Martin Ryle) … 1974年ノーベル賞
・パルサーの発見 (Antony Hewish) … 1974年ノーベル賞
・宇宙背景放射の発見(PenziasとWilson) … 1978年ノーベル賞
・連星パルサーによる重力波放射の検証 (Russel HulseとJoseph Taylor) … 1993年ノーベル賞
・宇宙背景放射の黒体スペクトルと温度ゆらぎの発見 (MatherとSmoot) … 2006年ノーベル賞 

Posted at 09:21 PM     コメントを読む/書く

日 - 9 月 24, 2006

初秋の八重山高原 


二日間の入来観測所運用当番から帰還しました。八重山高原には乾いた秋風がそよぎ、水蒸気を嫌う電波観測には好条件。天気が良かったので40天体ものメーザー源を次から次へと観測。内職しようと用意した仕事は全く手が付きませんでした。あまり天気がよいのも考えものだな。 

Posted at 11:36 PM     コメントを読む/書く

木 - 9 月 21, 2006

入来観測所で見学案内 


13名の団体から見学案内の申し込みがあったので対応する。VERA計画でめざしている銀河系の地図作りの話や、星までの距離をどうやって測るかとか、電波望遠鏡がいかに微弱な電波を受信しているかなどを、20mアンテナの前で説明する。ちょうど観測の狭間の時間帯だったので、観測棟のコンソールからアンテナを動かすコマンドを打ってもらうと、実際にアンテナが回るので喜んでもらえた。
60代の方々は判で押したように、この観測施設の経費とその出所を突いてくる。ええ、もちろん皆様の貴重な税金を使わせて頂いております。こういうときの私の対応も決まっています。「この観測施設に、一人当たりいくら税金を使ってもよいと思いますか?」と逆に尋ねるのです。たいていの人は、観測施設の予算を日本の人口で割った額よりもずっと高額の値段を答えてくれるので、ちょっと安心です。 

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金 - 9 月 15, 2006

比熱が負の世界(3) 


K: ところで、このような重力の系には面白い性質があるんですよ。この「はるか」シミュレーター で「速度+5%」のボタンを押してみて。
N: 「はるか」が遠くまで飛びますね。
K: そう、エネルギーと角運動量を与えたからね。で、軌道運動がゆっくりになったと思わない?
N: 確かに…速度を増やすボタンを押したのに、全体的にゆっくりになりますね。
K: そう、ケプラー運動ではエネルギーを与えると速度が減るんだ。
N: 何だか矛盾しているような気が…。
K: 常識と逆ですよね。この系の「温度」が定義できるんだけど、分かりますか?
N: え、温度ってどういうことですか?
K: 温度は、粒子の乱雑な運動の速さを表す指標ですよね。質量mの粒子の運動エネルギーは、平均速度がvなら3mv2/2ですね。これを温度に換算するにはボルツマン定数kを使って、kT/2 = 3mv2/2とするのでしたから、T = 3mv2/k。速度が大きいほど温度Tが大きいわけです。
N: なるほど。
K: で、ケプラー運動では、「はるかシミュレーター」で見たように、エネルギーを加えると速度が減る、ということは…。
N: 温度が下がる!
K: そう、逆に「速度-5%」のボタンを押してエネルギーと角運動量を抜くと、内側に落ち込んで速度が増すでしょう。エネルギーを抜くと温度が上がるんです。
N: おおー。
K: 物体に注入したエネルギーの量と温度上昇との比例係数を、比熱と言いますよね。普通の物質はエネルギーを加えると温度が上がるから比熱はプラスです。でもケプラー運動だと、
N: 温度が下がる…。
K: ということは、
N: 比熱がマイナスだ。スゲー!
K: そうなんです。比熱が負の世界、これが自己重力系の特長なんですね。 

Posted at 11:55 PM     コメントを読む/書く

比熱が負の世界(2) 


K: さて、質量Mの星の重力f(r)=GMr-2 erの回りの運動をケプラー運動って言うのですけど、簡単のために円運動を考えると、重力GMr-2 と遠心力v2r-1とがつり合っているから、v=(GM/r)1/2だよね。ここで、v=rωは回転速度ですよ。すると、単位質量あたりの角運動量はr2ω = (GMr)1/2となります。
N: そうですね。
K: 面倒だから、以後単位質量あたりの角運動量をAと書くと、A= (GMr)1/2、つまり外側に行くほど角運動量は大きいんだ。太陽系で言えば、内側の水星は角運動量が小さく、外側の海王星は角運動量が大きいわけですね。
N: ふーん。
K: 中心に向かって落ちるためには、つまりrを小さくするには、角運動量を小さくする必要があるわけです。
N: でも、角運動量は保存するんぢゃなかったでしたっけ。
K: そう、中心力場では角運動量が保たれて落ちることができないんです。実際、地球は太陽に落ちていかないでしょ。地球の角運動量が保たれているからですね。
N: それぢゃ、どうやってブラックホールに燃料を落とすのですか?
K: 角運動量を抜かなくてはね。それが「角運動量輸送」なのです。
N: あ、Angular momentum transferですね。
K: そう。それには粘性とか力学的摩擦といった、中心力場とは違う角運動量を輸送するしくみが必要なんです。
N: 摩擦でブレーキをかけるのですね。 

Posted at 11:39 PM     コメントを読む/書く

比熱が負の世界(1) 


大学院生のNさんとの会話を、脚色して再構成。
N: Angular Momentum Transferって何ですか?
K: 角運動量の輸送のことですね。ブラックホールに燃料を供給するには角運動量をどうやって抜くかが問題なんですよ。
N: 角運動量って何でしたっけ。
K: 単位質量あたりの角運動量はr2ωでしたよね。rは中心からの距離, ωは角速度です。中心力場では角運動量が保存されることは知ってる?
N: えーっと…。
K: 中心力場ってのは、物体に働く力f(r)が位置ベクトルrと常に平行になる場のことですね。r方向の単位ベクトルをerと置くと、f(r)=αerと適当な比例係数αを使って書けるのが中心力場です。例えば、質量Mの星から受ける重力はf(r)=GMr-2 erとだからこれも中心力場ですね。
N: はい。
K: 運動方程式は、f(r)=d2/dt2 (r er)= d/dt (dr/dt er + rωeθ) = ( d2r/dt2 - rω2)er + (2dr/dt ω + r dω/dt) eθになるね。ここで、der /dt = ωeθ, deθ/dt = -ωer を使ったよ。さて、中心力場ではf(r)=αerなのだから、運動方程式の左辺に eθの項はないわけで、だから右辺のeθの項もゼロにならないといけないんだ。だから、2dr/dt ω + r dω/dt = 0。この式にrを掛けると2r dr/dt ω + r2 dω/dt = 0。つまりd/dt ( r2ω) = 0。これで、角運動量r2ωが時間変化しないことが示せたね。これを角運動量保存則っていうんだ。知っていて損はないですよ。
N: 昔、習った気がします。 

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