雲ノ平から見上げる黒岳

雲ノ平 山行記録 #1/4

2002年8月15日 - 18日


この夏、久しぶりにMと山に行く機会に恵まれた。初めての山歩き以来、彼も私もそれぞれに山歩きを楽しんでいるが、住む場所が離れているので一緒に山を歩いたのはこれでやっと4回目。お互いの都合が合うわずかな隙間日程で、憧れの雲ノ平を訪れることができた。素晴らしい風景を満喫できただけでなく、気の置けない友人と歩くことで本当に楽しく幸せな4日間を過ごすことができた。
私の乗った列車が3時間遅れで富山に到着するという波乱含みの初日。雨の中を折立から太郎兵衛平までひたすら登る。

第1日 (8月15日) 赤羽−(急行 能登) → 富山8h47m/8h58m−(富山地鉄) → 有峰口−(タクシー) → 折立10h30m/10h50m → 1870.6m三角点12h57m → 2196m地点14h10m → 太郎平小屋16h00m

第2日 (8月16日) 太郎平小屋 → 雲ノ平山荘

第3日 (8月17日) 雲ノ平山荘 → 黒岳(水晶)→ 三俣山荘

第4日 (8月18日) 三俣山荘 → 新穂高温泉

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第1日 (8月15日)

急行「能登」に乗るべく、京王線で新宿に向かい、山手線で池袋,埼京線で赤羽と乗り継ぐ。0h0m頃に赤羽駅ホームからMに電話連絡。彼は「サンダーバード」号でもうすぐ富山駅に着くところで、駅前のホテルに宿泊予定。一方私はこれから列車に乗るところ。
0h04mにやってきた「能登」はほぼ満員状態であった。指定席を取っていたのはよいが、喫煙車しか空きが無かったので煙いし、隣席の男はすでに大股を広げて熟睡しているので狭い。こちらも遠慮なく圧力をかけて領土拡大しつつ眠りに就く。
1h30m頃目が覚めると新前橋駅に停車している。ホームの向かいには特急「北陸」も停まっていた。時間調整だろうかと思ったが、2h30mを過ぎてもまだ停まったままなのでおかしい。3h00m頃に車内放送があり、「渋川駅付近で落雷のため信号機が故障し停車しているが、まもなく発車できる」とのことだ。なんてこった。特急「北陸」が先に発車したが、こちらはまだ動く気配がない。結局3h40m頃になってようやく発車。この時点で3時間10分の遅れというアナウンスがあった。これでは富山駅前6h10m発の折立行きバスに間に合わないのは確実だ。やがて東の空が白くなってきた…まだ上越国境も越えていないのに。清水トンネルを抜け越後湯沢の手前で待ち合わせ時刻の5h42mになったので、列車内の公衆電話からMに電話し、遅れる旨を伝える。到着予想時刻は9h0m頃なので、バスはもうない。ともかく私の富山到着をMは待ってくれるという。折立までタクシーを使うことになるのでMと二人では高く付くから、列車内の登山者に「折立まで同乗しませんか」と声を掛けるが、みな室堂に行く人ばかり。
列車は長岡で向きを変え、糸魚川や黒部を通過して8h47mに3時間以上遅れて到着した。急行券の払い戻しを受けるべく精算所に並ぶと改札の向こうにMを発見。「8h58mの電車に乗るから先に切符を買っておくよ!」と急いでいる。改札を抜けて富山地鉄のりばに急ぎ、切符を受取って立山行き列車に乗り込む。ようやくここでMとの再開を祝し、遅れた経緯などを説明。雷のためとはいえ大迷惑をかけてしまった。
Mはさすがに臨機応変で、富山地鉄の有峰口からタクシーを使うべく携帯電話で配車要請をしていた。有峰口では十数名が降り、折立まで行く二人連れと単独行一人を巻き込んで5人でタクシーに同乗した。結果、一人当たり3,000円の料金で済んだのは助かる。折立には10h30m到着。

 

折立から出発

折立から出発!

ここで荷物の再配分をし、初日の食材をMに持ってもらう。休憩所の水を汲もうとすると「生水は飲まないように」と無情な警告(PL法の影響か?)。準備体操と記念写真を済ませて10h50mに出発。Mが「仕方ないから、行きますか」などと後ろ向きなことを言うのに驚いたが、これは頑張り過ぎないでペースを保つための彼の処方であって、この後もたびたび耳にすることになる。
登り始めからなかなかの急登。ともかくゆっくり歩くことをお互い心がける。30分登って最初の小休止をした後に少し進むと雨が落ち始めた。すれ違う下山者がみな雨着を着ているので覚悟はしていたのだが、早くも雨着を着る羽目になるとは。さっさと着て出発!と思ったら、ザックカバーを掛けるのを忘れていたことをMに指摘され早くもボケを露呈。
雨着で急登は蒸し暑い。「暑くならない程度にゆっくり行こう」「乳酸が溜まらない限度は心拍数90以下だよ」と無理難題をMに言うが、「それじゃ着かないんだけど…」と正論を返される。雨は徐々に強くなってきて、前途に暗雲が立ちこめる。下山してきた人とすれ違った際に、「薬師岳の稜線で30メートルの風雨にまいった」なんて話も聞いた。

やや傾斜が楽になってきたかなーと思うと、標高1870.6mの三角点に12h57mに到着し、一旦樹林帯から抜ける。シャリバテ気味なので昼食を摂りたいが雨なのでカロリーメイトで済ませる。
やや雨足は弱くなったものの、霧の中で視界はほとんどない。開けた草原の中の稜線歩きのはずなのに残念だ。木枠と石で舗装された道でとてもよく整備されており快適。道の両脇には池塘も散見される。晴れていれば薬師岳も見える頃だろうに…。
稜線歩きの途中で、下山者が一人仰向けに横たわっているのを数名が心配そうに取り囲んでいるのに出会った。事故だろうか。少し進むと太郎平小屋の従業員らしき人が駆け降りて救助に向かっていった。ご苦労なことだ。

 

太郎平へ続く道

太郎平へ続く道

 

食後のコーヒー

チーズフォンデュの昼食とドリップコーヒーの贅沢

14h10mに2196mの地点を過ぎ、雨が上がった14h30m頃にベンチとテーブルのある一角に出たところで、遅い昼食とする。メニューはチーズフォンデュで、白ワインにチーズを投入したものを煮立たせた中に茹で野菜やフランスパンを泳がせてアツアツのまま食べる。お手軽で幸せな気分に浸れる料理だ。ただし茹で野菜は日もちしないし重いので初日限定のメニュー。平らげた後にはM提供のドリップコーヒーだ。初日から幸せな気分。高層湿原の稜線を少し登って16h00mに太郎平小屋に到着。
小屋で受付を済ませ、3階屋根裏部屋の窓際をあてがわれる。予約をしておいたためか、比較的よい場所だ。心配していた混雑もないようで、一人で布団一枚を占有できる。濡れた雨着などを干す張綱もあって助かる。ストレッチの体操をしていると激しい雨となったが、小屋の中なので安心だ。雨が通り過ぎると、ちらと三俣蓮華岳方面が見えた。昼食が遅かったので夕食は遅め(といっても17h40m頃)に摂った。山小屋なのに料理の品数が多くて感激。食後は早めに就寝。

 

太郎兵衛平付近の高層湿原

太郎兵衛平付近の高層湿原

 

霧の中の太郎平小屋

霧の中の太郎平小屋


初出 : 2002年8月25日, 最終更新日 : 2003年12月6日

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