倍率20倍

望遠レンズで観望してみる

2004年5月2日


山歩きで遠景や野鳥を撮影するのに携帯する望遠レンズを、屈折望遠鏡として眼視にも使えるよう、工夫してみました。重たい望遠レンズと望遠鏡・双眼鏡を別々に持ち運びすることなく、一本で兼用できるので荷物を節約できます。星雲・星団や惑星などの天体観望にも威力を発揮します。

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屈折望遠鏡は、焦点距離の長い対物レンズと短い接眼レンズから構成されます。カメラの望遠レンズも対物レンズと同等の光学系ですので、接眼レンズを取り付ければ立派な屈折望遠鏡になります。対物レンズの焦点距離をf1, 接眼レンズのそれをf2とすると、倍率はf1÷f2で与えられます。例えば180mmの望遠レンズに9mmの接眼レンズを付けると、20倍の立派な望遠鏡になるわけです。

標準レンズ

【写真1】標準レンズで撮影した風景

下の写真は、180mmの望遠レンズに20mmの接眼レンズを付けた場合(倍率9倍)と、9mmのそれを付けた場合(倍率20倍)の見え方を示しています。望遠鏡を使わない写真と比較して、いかによく見えるか分かりますでしょうか。

倍率9倍

【写真2】倍率9倍(180mm望遠レンズ+20mm接眼レンズ)

NikkorED180mm

【写真3】倍率20倍(180mm望遠レンズ+9mm接眼レンズ)

このように望遠レンズを望遠鏡として使うには、接眼レンズを取り付けるホルダーが必要になります。専用のホルダーを購入すると5,000円くらいするのですが、ただの取り付け金具にそんな出費をするのは癪ですので、安価な材料を使って自作してみました

接眼レンズ

【写真4】右: PL 20mm接眼レンズ, 中: PL 9mm接眼レンズ, 左: 加工後の接眼レンズホルダー

用意するもの

・レンズ裏ぶた
ニコンFマウントレンズの場合、LF-1という型番です。定価420円, カメラ量販店で315円でした。
・接眼チューブ
接眼レンズをねじ止めするだけの31.7mm径チューブです。誠報社で20円で投げ売りしていました。
・接眼レンズ
これは自作はとてもできないので、メーカー製を誠報社で購入しました。Vixen PL 20mmが3,200円、PL 9mmが2,700円でした。

つくりかた

  1. レンズ裏ぶたに接眼チューブをあてがい、穴をあけるための円を罫書きます。
  2. 罫書き線上にキリで穴を開けます。
  3. 空けた穴を起点として、糸鋸で罫書き線に沿って切断します。怪我をしないように注意。手袋をはめて作業した方が安全です。
  4. 接眼チューブをねじ込みます。チューブがレンズ裏ぶたに垂直になるよう調整してください。また、この状態でレンズに取り付けて、ピントの調整範囲内で合焦することを確認してください。
  5. 金属用接着剤でチューブを裏ぶたに固定します。

加工中

【写真5】レンズ裏ぶたを糸鋸で加工中

接眼レンズホルダー

【写真6】完成した接眼レンズホルダー

望遠レンズに装着

【写真7】望遠レンズに装着して、「望遠鏡」にしたところ

これだけで、十分よく見える望遠鏡の出来上がりです。冒頭の写真はこの接眼レンズホルダーを使って撮影したものです。口径が72mmある立派な屈折望遠鏡で、すばるやプレセペ星団や二重星団などの散開星団は微光星まで美しく見えますし、M81, M82, M51などの系外銀河もよく見えました。野鳥や遠くの山を眺めるのにも有効です。望遠レンズと接眼レンズの組み合わせによっては、もっと高倍率も可能です。

三脚に取り付け

【写真8】ゴムバンドで三脚に取り付け

倍率が高いと手持ちではさすがに使いづらいので、三脚に固定した方がよいです。私が使用しているレンズには三脚に取り付けるためのネジ穴が切ってないので、とりあえずゴムバンドで固定しています。
欠点は、上下が逆さまの倒立像に見えることです。天体観望の場合には宇宙には上下がないので気にならないのですが、風景や野鳥を眺めるには、頭の中で像を180°回転させる「慣れ」が必要です。双眼鏡やフィールドスコープのように正立プリズムを使えばよいと思われるかもしれませんが、合焦点がピントの調整範囲から外れてしまうので使えません。
洞察力のある方でしたら、「望遠レンズを望遠鏡として使えるなら、望遠鏡を望遠レンズとして使えるのでは」とお気づきかも知れません。その通りです。望遠鏡の接眼部を外して望遠レンズとして使えます。この方が望遠レンズより軽いし安価です。望遠レンズとの違いは、絞りがない(常に開放)ことと、光学系の明るさがF=6程度と望遠レンズに比べて暗いことです。それでも構わないと割り切れば、重い望遠レンズを持ち歩かずに望遠鏡を使うのもよさそうです。写真に重点を置くなら望遠レンズ、眼視を重視するなら望遠鏡、と言えましょう。


最終更新日 : 2004年5月2日

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