笊ヶ岳の山容

笊ヶ岳 山行記録 #1/2

2005年7月29 - 30日


笊ヶ岳は白峰南嶺に連なる標高2629mの高峰で、大笊・小笊の双耳峰が格好よい山だ。赤石山脈の主脈を一望できる展望台でもある。老平から笊ヶ岳を経て転付峠に至るコースは古典的なルートで、登山道はしっかりと付いており道標も至るところにあるので道迷いの心配はほとんどないが、途中に宿泊設備はないのでテント泊の山行となる。また、途中には水場がないので、必要な量の水を汲み上げなくてはならない。老平から標高差2130mを登り詰めるのが敬遠されるためか、盛夏にあっても歩く人は多くなく、静かな山行を楽しむことができる。山頂に宿泊して朝焼けの赤石山脈を眺めてみたいと、テントを担いで出かけることにした。

第1日 (7月29日) 武蔵境4h43m −(中央線・身延線)→ 身延7h28m/7h30m −(山交タウンコーチバス)→ 七面山登山口8h12m −(タクシー)→ 老平8h30m → 一軒家9h08m → 奥谷沢徒渉点10h03m → 山の神11h07m → 桧横手山13h56m → 布引山16h23m/16h40m → 笊ヶ岳17h54m

第2日 (7月30日) 笊ヶ岳 → 生木割 → 転付峠 → 田代発電所 → 田代入口付近駐車場

経路図はこちら

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中央線と身延線を乗り継いで、身延へ向かう。前回と同じ轍を踏まないよう、下部温泉からザックを降ろして通路に立ち、眠らないように注意する。 7h28mに降りた身延駅のロータリーで奈良田行きのバスを待つがなかなか来ない。よく見るとバス停に「通行止めのため新早川橋まで折り返し運転」などと掲示があるのに驚く。まさか先日の台風7号で通行止めか…などと焦っているところにバスが5分以上遅れてやって来た。折り返し運転の掲示について運転手さんに告げると、「ああ、台風の時のままだった」と剥がしてくるのが面白い。 8h12mに七面山登山口でバスを降りると、予約していたすみせタクシーの運転手さんが待ってくれていた。老平までは約20分, 料金は2070円でした。

岩をくりぬいたトンネル

岩をくりぬいたトンネルと滝

老平から歩きはじめると、農作業をしていた男性に呼び止められる。遭難捜索隊が入っているのでゲートが開いていると教わる。聞くと、中高年の男性が行方不明で、捜索中とのことだ。途中で捜索隊の人に会うのだろうか。
しばらくは奥沢谷沿いの林道歩き。ときおり彼方に布引岳の山容が見えてやる気が出る。岩をくりぬいたトンネルの手前には滝があって、蒸し暑い中にも清涼感が漂う。

トンネル脇の滝

トンネル脇の滝

布引岳の山容

布引岳の山容

9h00mに林道の終点に到着。駐車してあるのは捜索隊の車だろうか。ここからは山道だ。少し登り廃屋となった一軒家の脇を通りすぎる。セミがヒュンヒュン飛び交う中、蒸し暑いけど所々で石清水のシャワーを浴びるのは楽しい。

石清水のシャワー

石清水のシャワー

奥谷沢徒渉点に10h03mに到着。台風による大雨の影響か、かなり水量が多い。徒渉用にサンダルも用意してきたけど、この急流を渡るのは少し怖い気がしたので、上流に徒渉できる場所を偵察に行く。30mくらい上流に、大岩をつたっていけば渡れそうな場所を見つけたので、荷物の水を全て捨てて軽くした上で思いきりジャンプ。何とか渡ることができた。この先には水場は転付峠までないので、支流の水を3リットル汲み、自分の体にも水を蓄える。

奥谷沢徒渉点

奥谷沢徒渉点。写真中央下の岩から左の岩へジャンプした。

山の神の祠

山の神の祠

ここからが急登の始まり。標高900mの地点から一気に1700m以上登り詰めなくてはならない。しかも厳しい給水制限が課せられているので、汗をかかないように時給300mのペースでゆっくりと歩みを進める。20分くらい登ると捜索隊2名が休憩している。聞くと、50代の男性が下山予定日を過ぎて連絡がとれないらしい。「沢筋とか注意して見てくれないかな」と言われ、「見かけたら連絡します」と答える。暑い中ご苦労様です。遭難したら多くの人に迷惑をかけてしまうのだ、自分も注意しなくては、と肝に銘じる。
標高1250m付近の山の神に11h07mに到着。なんとか時給300mペースを維持しているけど、結構汗をかいてのどが渇くなぁ。祠の脇で休ませてもらい、ゼリーを食べて気合いを入れてから再起動する。

ヤマアジサイ

ヤマアジサイ

相変わらず急登の連続。蒸し暑いけど、ところどころ沢筋から登ってくる風に清涼感を覚える。12h30mに標高1600m付近に到達。この辺りでは花は端境期のようであまり多くはないが、ヤマアジサイやトリアシショウマ(?)の白さには見入ってしまう。

トリアシショウマ(?)

トリアシショウマ(?)

イワカガミの実

イワカガミの実

場所によってはカニコウモリが地面を覆い尽くしているが、まだ蕾なのは残念。オサバグサも多いけど、花期は終わってシダのような葉を楽しめるだけだ。植生が単調で、高度計の数値だけが楽しみになってきた。桧横手山の手前で、3人の捜索隊と出会う。まだ遭難者は発見されないようで、これから下山して徒渉点に集結するそうだ。ご苦労様です。

カニコウモリの群落

カニコウモリの群落

ヤゴゼンタチバナの群落

ゴゼンタチバナの群落

13h56mに標高2021mの桧横手山に到着。かなりバテていて時給300mのペースからも遅れが目立ち始めている。水を飲みたいところだけど節制し、ゼリーとはちみつ飴でガマン。

まだ花の残るゴゼンタチバナ

まだ花の残るゴゼンタチバナ

ギンリョウソウって馬の顔みたい

ギンリョウソウって馬の顔みたい

ここから先は少し傾斜も緩やかになり、植生を楽し余裕がでてきた。ゴゼンタチバナが踏み場もないほどに生えているが、花期が終わっているのが残念。ギンリョウソウもたくさん生えている。

透けるギンリョウソウ

透明感を出してみました

ガレ場の縁に到達

ガレ場の縁に到達

タカネビランジ

タカネビランジ

ミヤマミミナグサ

ミヤマミミナグサ

ガレ場に咲く花

ガレ場に咲く花

16h02mにガレ場の縁に出るとやっと視界が開ける。青空のもと、稲又山や青薙山の展望が得られて嬉しい。ガレ場にはタカネビランジやミヤマミミナグサが群生している。ミネウスユキソウもたくさん生えている。やっと高山の稜線らしい雰囲気が味わえて嬉しい。

ミネウスユキソウ

ミネウスユキソウ

タカネビランジと誰?

タカネビランジと共に育つのはイワオトギリかな?

稲又山・青薙山

稲又山・青薙山方面

眺めのよいガレの縁を歩くのは楽しい。ガレ場越しに、昨年残雪期に歩いた七面山から八紘嶺に連なる稜線が望める。その向こうにはかすかに富士山の山容も。危険個所は東側を巻き道を行くが、そこはまたタカネニガナやミヤマアキノキリンソウなどお花畑の植生を楽しむことができる。

ガレ場の彼方に七面山

ガレ場の彼方に七面山

タカネニガナ

タカネニガナ

ミヤマアキノキリンソウ

ミヤマアキノキリンソウ

何でしょう?

何でしょう?

布引岳から富士山方向

布引岳から富士山方向

16h23mに標高2583.7mの布引山に登頂。山頂には2 - 3張ほどの幕営スペースがある。予定ではここに泊まるつもりだったけど、眺めが得られないこの場所は少しつまらないし、明日の行程を考えると笊ヶ岳まで何とかたどり着きたい。笊ヶ岳の幕営スペースが確保できるかどうか心配だけど、今日はあまり人も入っていないだろう。最悪の場合はここまで引き返して幕営することにして、笊ヶ岳をめざす。

ハクサンシャクナゲ

ハクサンシャクナゲ

一旦標高2300mまで下る途中からは、笊ヶ岳の双耳峰が望めてやる気がでる。その後は登りなのだが、ここでは翅虫が多くて閉口した。登山道両脇の葉に停まっているところに私が分け入るものだから、びっくりして飛び立つのだろう。肌や衣服やザックに容赦なくびっしりとまとわりつき不快だが、仕方ない。気にせずのんびり行くしかない。

笊ヶ岳の山容

笊ヶ岳はまだ遠い

笊ヶ岳に登頂

笊ヶ岳に登頂

それにしても相当に疲れた。やはり布引山泊まりにしておけばよかったかしら、という後悔が頭の中を渦巻いてきた頃、17h54mにやっと笊ヶ岳に到着。
霞で赤石山脈の遠望が得られないのが残念だが、小笊の彼方にうっすらと見える富士山や、これまで歩いてきた布引山方面や、明日歩く偃松尾方面を眺めることができて嬉しい。

笊ヶ岳から布引山方面

笊ヶ岳から布引山方面

テントは山頂から少し布引山方向に戻ったスペースに張る。登山道を塞いで迷惑な張り方だけど、今日はだれも来ないだろうから問題ないだろう。
テントの中で早速夕食。サラスパを茹でてプチパスタ・プッタネスタを掛けて食す。茹汁はタマゴスープにして、貴重な水を有効利用する。とにかく疲れたので、食後にストレッチをしてから早々に就寝。涼しくて静かでよく眠れる山頂だ。

今晩の宿

今晩の宿

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初出 : 2005年8月7日, 最終更新日 : 2005年8月9日

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