狼平の笹原

大菩薩連嶺 山行記録 #2/2

2004年4月24 - 25日


氷点下に冷え込んだ澄み切った空の下で星野写真を撮った明け方。何とか彗星に会うこともできた。大菩薩嶺に続く稜線をのんびりと歩いて、植生や地質や野鳥など、豊かで多様な自然を満喫することができた。大菩薩峠に人気が集中しているおかげで、石丸峠以南は人通りが少なく静かな山歩きを楽しむことができます。

第1日 (4月24日) 甲斐大和駅 → 大谷ヶ丸 → 大蔵高丸→ 白谷丸

第2日 (4月25日) 白谷丸6h14m → 黒岳6h42m → 牛奥ノ雁ヶ腹摺山7h51m → 小金沢山8h41m → 大菩薩峠10h09m → 大菩薩嶺11h05m → 丸川峠12h44m → 裂石14h25m

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はくちょう座

はくちょう座

いて座

いて座

さそり座

さそり座と富士山

2h00mに起床。断続的な突風にテントが揺さぶられる。ペットボトルに汲んだ水が一部氷結している。マルタイ棒ラーメンで体を暖める。晴れ渡った夜空に夏の天の川が架かり、富士山に向かって注いでいる。さあ、気合いを入れてリニア彗星を迎えよう。富士山の上を通過するさそり座や、銀河中心方向のいて座、それに銀河の渦状腕を接線方向に見通すはくちょう座などの星野写真を撮る。望遠鏡で眺めるM7星団も見ごたえ充分。

そろそろ東の地平線からリニア彗星が昇って来る頃だ。カメラを向け、望遠鏡でもその姿を探す。しかし、東京方面の光害は思った以上に強烈で、高度5°以下の星は殆ど見えない。位置は分かっているので視認できなくてもとにかくシャッターを切る。薄明も始まってますます背景の空が明るくなってきた。ようやく4h25mになって望遠鏡で彗星の姿を確認。暗いなぁ。尾は確認できず、青緑色のコマが見えるだけだ。写真を現像してみたら、まあなんとか写っていて、尾も何となく存在がわかる程度だった。ところが、全くノーマークだったブラッドフィールド彗星が写野の端ぎりぎりに入っていたのを、後になって気付いた。リニア彗星よりよっぽど立派な姿ではないか。思いがけず嬉しい!

ブラッドフィールド彗星

ブラッドフィールド彗星

二彗星競演

二彗星競演

リニア彗星

リニア彗星

彗星の撮影と観望に夢中になっているうちは気にならなかったが、星が薄明に溶けていく頃になると突風が体に刺さるように寒さが応える。早々にテントに退却。テント内の温度を測ると−5.9℃だった。熱いコーヒーで生き返る。荷物をまとめ、テントを強風に吹き飛ばされないよう注意しながら畳んで、6h15mに出発。朝日を浴びる富士山や赤石山脈や八ヶ岳の山嶺を眺めながら、北に向けて歩みを進める。

幕営地から富士山

幕営地から富士山の眺め

黒岳の森

黒岳の森

黒岳に向かうなだらかな斜面はミズナラの森だ。凍土に積もったフカフカの落葉を踏み、野鳥のさえずりを楽しみながら歩く。ここでもまたルリビタキに出会った。

ルリビタキ

ルリビタキ

6h42mに樹林に囲まれた黒岳山頂を通過。黒岳の名の通り、樹林に囲まれて展望は利かない。山頂を過ぎると笹原とコメツガという植生に変わる。

黒岳山頂

黒岳山頂

賽の河原

賽の河原の笹原

7h20mに笹に覆われた賽ノ河原の峠を通過。今日初めて人(二人連れのパーティ)と出会う。東方向に東京湾がキラキラ光るのが見える。なんと展望にすぐれた場所だろう…おかげで光害もすごかったけど。7h51mに牛奥ノ雁ヶ腹摺山を通過。南方向の展望が良く、富士山やさっき通過した黒岳がよく見える。

ここからはコメツガやネズコの密生する暗い森の中、細かいアップダウンを繰り返す道だ。苔むす岩塊が楽しい。体力を使い暑くなってきたのでダウンジャケットを脱ぐ。森から一旦抜けると展望のよい小金沢山山頂に8h44m到着。

再び暗い森を抜け、9h10mに狼平に出る。ここから大菩薩峠までは明るい笹原がずっと続く。西側には大菩薩湖(上日川ダム)も見下ろせる。展望に恵まれた稜線歩きは実に爽快だ。9h41mに石丸峠を通過。霜柱が陽射しに融けてぬかるんでいるが、多少のことは気にしない。北方向には昨年歩いた雲取山に続く石尾根がよく見える。東には奥多摩湖と御前山・大岳山も分かる。以前に歩いた山嶺を眺められると嬉しいものだ。

狼平に広がる笹原

狼平に広がる笹原

大菩薩峠はもうすぐ

大菩薩峠はもうすぐ

大菩薩峠に10h09mに到着。さすがに大勢の人で混雑している。静かで楽しい山歩きもここまでだ。大菩薩嶺へ続く道には登山客が連なっている。タバコの煙や喧噪の中を大菩薩嶺に登るのか…何だか興ざめだから、これまでの感動を壊さないようにさっさと下山しようと一瞬考えたが、裂石のバス停にたどり着くのにはやはり大菩薩嶺を通って丸川峠から降りるのが最適なので、ともかく進むことにしよう。

旧峠を10h22mに通過。ここに広がる岩塊斜面は仙水峠や金峰山北面のそれに比べると岩が細かく、凍結破砕作用による侵食がより進んでいる。仙水峠もそのうちにここと同じようになるのだろうか。

岩塊斜面

旧峠の岩塊斜面

雷岩を通過すると樹林帯に入り展望はここまで。11h05mに大菩薩嶺に到着。山頂では団体パーティがレジャーシートを広げて騒々しいのでさっさと立ち去る。コメツガの森を丸川峠に向けて下ってゆく道を進む。名前の分からない白い花は、花弁が4枚と5枚の株が混在しているが、同じ種なのだろうか。(2005.5.4追記 : バイカオウレンでした)倒木がちょうどベンチのように腰をかけやすい具合になっている場所があったので、ここで昼食にする。茹でたマカロニにボロネーゼソースを掛けたパスタ。茹汁はミネストローネスープにする。食後にコーヒー。これで食糧はほぼ完食。水もちょうど使い切った。

バイカオウレン

バイカオウレン。花弁が4枚と5枚の株が混在。

イロハモミジ

イロハモミジの新芽

まるかわ荘の建つ丸川峠を12h44mに通過。夏にはお花畑が広がるらしい草原の中を歩く。やがて尾根筋の急降下。新緑の落葉松林の中を下る。バスの時刻まで十分に余裕があるので、なるべくゆっくりと歩く。ミツバツツジの葉が、下るほどに展開していく様子が面白い。野鳥のさえずりもよく聞こえるが、その姿を写真に納めようと望遠レンズで狙っていると2,3人連れのパーティがおしゃべりしながら次々とやってくるので、その都度鳥に逃げられてしまう。野鳥の姿を楽しむには、人通りの少ない大菩薩南嶺はよかったなぁ。

木イチゴの花

木イチゴの花

ヒガラ

ヒガラ

コゲラ

コゲラ

13h57mにみそぎ沢出合に到着。舗装された林道を歩いて14h25mに裂石集落の大菩薩峠登山口バス停に到着。バス停にある番屋茶屋で頂いたよもぎ団子がおいしい。14h52m発の塩山行きバスで帰途に着く。

余談ですが、バス料金はたったの100円でした。30分以上の乗車時間で、1000円くらいと予想していたのに、何故だろう。降車時に運転手さんに尋ねたかったけど、降車の待ち行列が続くので聞けなかった。

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初出 : 2004年4月29日, 最終更新日 : 2004年4月29日

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