白谷丸山頂

大菩薩連嶺 山行記録 #1/2

2004年4月24 - 25日


2004年4月から5月にかけて、明るい彗星が3つも接近している。C/2002 T7 リニア彗星, C/2001 Q4 ニート彗星, それにC/2004 F4 ブラッドフィールド彗星だ。このうちリニア彗星とブラッドフィールド彗星を明け方の空に迎えるため、東の視界の良い大菩薩連嶺に出かけてみよう。大菩薩連嶺は甲府盆地の東縁を形づくる、大菩薩嶺 (2057m) から南へ15 kmに亙って1600m - 2000m級の峰が続く稜線である。夏にお花畑となる草原や笹原、岩塊斜面に密生する針葉樹や土壌に育つ広葉樹林など、植生が豊かな山域でもある。連嶺中央部にあって草原に囲まれた白谷丸は花崗岩の砂礫からなる頂で、ここに幕営して星空を存分に眺めて来た。

第1日 (4月24日) 武蔵境5h00m−(中央線)→ 甲斐大和駅6h41m → 景徳院7h10m → 曲り沢峠8h52m → 大谷ヶ丸10h21m → ハマイバ丸11h39m/12h40m → 大蔵高丸13h03m → 湯の沢峠13h22m → 白谷丸14h33m

第2日 (4月25日) 白谷丸 → 大菩薩嶺 → 裂石

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新緑の尾根

新緑まぶしい尾根筋を行く

久々に強い寒気団によって冬晴れとなった寒い朝。空気の透明度が高く、天体観望には最適なコンディションだ。武蔵境5h00m発の中央線に乗り、6h42m甲斐大和駅に到着。田野集落に向かって国道20号線を、猛スピードで走り去る車列に怯えながら歩く。国道を離れるとのどかな初鹿野の里山。「武田勝頼公まつり」の幟が多く立つ景徳院の山門から、雨沢沿いの道に進む。
雨沢と曲り沢との間の尾根を登るコースを予定しているのだが、その登山口は地図ではきちんと書かれておらずわかりにくい。大鹿峠への道を進んでしまっていたが、民家の縁側にいたばっちゃんに道を伺って登山口がようやくわかった。景徳院の南縁にある橋を渡らずに、北東方向の薄暗い道に入るのだった。下草が生茂った道で、少し登ると「ヤマブキ漕ぎ」状態となった。それでも高度を上げてゆくと白峰三山が遠くに望める。新緑に木漏れ陽が透けて美しい。ミツバツツジの花も見事だ。

尾根から見上げる稜線

尾根から大谷ヶ丸の稜線を見上げる

陽射しは強いが風がひんやりと心地よい。緩やかな傾斜の続く尾根は歩きやすくて楽しい。目指す大谷ヶ丸への稜線がよく見える。芽吹いたばかりのヤブレガサの群落が北側斜面に現われると、わずかな歩きで大鹿峠から大谷ヶ丸へ連なる稜線に8h42mに到着。

ヤブレガサ

斜面にヤブレガサの群生

1301m峰(オッ立)を巻いて曲沢峠を8h52mに通過。ここまで登ると多くの木はまだ芽吹いていないが、いろんな種類のスミレや桜が咲いている。野鳥のさえずりも賑やか。道ばたに見つけたこの花(左の写真)は何だろう。チゴユリに似ているけど、めしべが赤くて花が上向きに咲いているのでチゴユリではないように思うが、名前がわからない。(2005.5.4追記 : ヒゲネワチガイソウでした)

ヒゲネワチガイソウ

ヒゲネワチガイソウ

山桜

たぶん山桜

豆桜

たぶん豆桜

聖・赤石・悪沢岳

聖・赤石・悪沢岳

白峰三山

白峰三山

甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳

10h21mに大谷ヶ丸到着。赤石山脈と甲府盆地の眺めが見事。今日初めて出会った登山者は単独行の男性。少し会話を交わす。すでにハマイバ丸方面に行って戻ってきたところだそうです。速いですね。

大谷ヶ丸からの展望

大谷ヶ丸からの展望

出発しようとすると、山頂標識に戯れるルリビタキを発見。憧れていた美しい鳥にこんなに間近で会えて、すっかり楽しい気分になってしまった。

ルリビタキ

大谷ヶ丸山頂で会ったルリビタキ

ルリビタキ

あまり人を恐れなかった

米背負峠を10h45mに通過する頃になると、西側の山に雲が湧き始めてきて気掛かりだ。まあ、空気が冷えているところに日射で暖められた空気がぶつかって雲が形成されているのだろう。日が落ちればきっと雲も消えることだろうと楽観的な気持ちで先を進む。11h01mに天下石を通過すると、一旦樹林帯から抜けて草地が広がる。

草原

天下石付近の草原

草原

歩いて来た大谷ヶ丸方面を振り返る

白樺や小梨が点在する明るい草原をピクニック気分で歩く。ハマイバ丸への緩やかな傾斜は笹藪の中を行く。サングラスは笹から眼を保護するためにも必携だ。

11h39mにハマイバ丸到着。昼食にしたいところだが、山頂は樹に囲まれて余り展望が良くないし、団体さんがレジャーシートを広げて賑やかなので立ち去る。2分ほど歩いた先に東側が開けた草原があるので、大月方面の展望を楽しみながら昼食にしよう。サラダスパゲティをミネストローネスープにぶち込んだイタリアンラーメン。デザートはヨーグルトゼリー。枯れ草の上でお昼寝したい気分だ。

お昼ご飯

大月方面を見下ろしながら昼ごはん

南西方面の眺め

草原から望む白谷丸と雁ヶ腹摺山

12h40mに出発。草原にてまたもルリビタキに遭遇。ウグイスやゴジュウカラ(?)の姿もカメラに収める。亀甲状に節理の走る岩を見つける。凍結破砕作用の初期段階を見ているのだろうか。

ウグイス

たぶんウグイス

ゴジュウカラ

ゴジュウカラかな?

岩

亀甲状に溝の走る岩

コマドリ

駒鳥に遭遇

ほぼなだらかな草原状の稜線を歩いて、13h03mに大蔵高丸に到着。展望の素晴らしい山頂。北方に黒岳と白谷丸が見える。北側の湯の沢峠に降りる道で駒鳥に出会った。少しの間登山道を先導してくれた後に、脇の笹原に隠れてしまった。

湯の沢峠付近には草原が広がっている。夏には見事なお花畑になるのだろう。草原にある岩は、さっきのものとは違った節理の走り方をしていて面白い。予定ではここに幕営するつもりだったが、すでに先客のテントが2張りあるので他に行きたいな。大蔵高丸山頂に戻るのもいいのだが、さらに北に進んだ白谷丸の山頂付近にも草原が見えていたので、そこまで行って幕営適地を探してみよう。見つからなければ戻ってくればいいのだし。

湯の沢峠付近

湯の沢峠付近の草原にて

湯の沢峠避難小屋

湯の沢峠避難小屋

湯の沢峠にザックをデポして、ペットボトルを携えて水場まで下る。2分ほど降りたところまで林道が通っていて駐車場に数台の車が停めてある。ここに建つ避難小屋は小さいながらも清潔で毛布などの装備もあり快適そうだ。窓にはカーテンまで付けられている。さらに2分ほど降りた水場では豊かな水量があり、ホッとする。

2リットルの水を加えたザックは重みを増す。白谷丸への登りはガレ場の脇を行く砂の道だ。花崗岩が破砕した白砂の斜面には、今にも転げ落ちそうな岩が見られる。雲が空の大部分を覆うようになり、日差しが無くて涼しいのはいいが、星空が見えるかどうかやや不安になる。

白谷丸のガレ場

白谷丸のガレ場

白谷丸のパノラマ

白谷丸のパノラマ

14h17mにたどり着いた白谷丸は南東面が草原になっている開放的な光景だ。東側に派生した峰は甲斐駒ヶ岳のように花崗岩の砂礫が広がり、見晴らしも良い。特に、リニア彗星が昇ってくる東側の視界は抜群だ。決めた!ここで彗星を迎えよう。コルの付近は平坦で幕営適地だ。枯れ草の上にテントを張ると寝心地は良いのだろうが植生にはインパクトを与えそうなので、岩に囲まれた裸地を見つけて幕営する。適度に柔らかい土壌で、ペグが刺さりやすく且つしっかりと固定できる。設営中にもルリビタキを見ることができた。雲量が増えてきて、風花が舞ってきた。晴れているのに降る雪は、狐の嫁入りでなく、何と呼ぶのかな。夜に備えてひとねいりしておこう。

幕営地

白谷丸の幕営適地

白谷丸とテント

白谷丸とテント

日没の頃に目が覚める。テントがうっすらと雪化粧している。雲が減り、夕焼けに八ヶ岳や赤石山脈のシルエットが美しい。2週間前に桃の絨毯が敷き詰められていた甲府盆地は、今は光の絨毯である。

夕焼け

夕焼け

甲府盆地の夜景

甲府盆地の夜景

夕暮れの光景を白谷丸山頂から見納めた後にテントに戻り、夕食。貧相なマルタイ棒ラーメンだが、寒い中ではご馳走だ。体が温まったので、星空を観望しよう。冷たい風が吹き荒ぶ中だが、西空には冬の星座に金星・火星・月・土星が集合していて賑やかだ。南のしし座には木星もある。

180mm望遠レンズに接眼鏡を取り付けて、望遠鏡として使う。すばるや二重星団やプレセペ星団が美しい。明るい光学系なので、M81, M82, M51といった系外銀河も結構良く見える。惑星には少し倍率が足りないが、木星のガリレオ衛星は今日は4つとも見えたし、土星の輪もしっかりと見える。月は眩しいです。一通り楽しんでから、テントに戻って就寝。

沈み行く星

沈み行く冬の星座と月, 金星, 火星

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初出 : 2004年4月29日, 最終更新日 : 2004年4月29日

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