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Y染色体原理主義 vs ミトコンドリア原理主義 



皇室典範に関する有識者会議」が女系天皇認めようという答申 をまとめたことに対して、「万世一系断絶の危機 」だとして反対している人もいるという。「万世一系」を信奉する人たちは、「Y染色体は父方から男の子のみに受け継がれるのだから、女系天皇を認めることは神武天皇以来受け継がれてきたY染色体が途絶えてしまい、万世一系が崩壊する」と危機感を抱いているそうだ。天皇制は宗教だと認識している私にとっては、天皇信者の人たちが何を信奉していようとどーでもいいことなのですが、遺伝について誤解を元に議論されているのが気になったので、おせっかいな一言。

■基本的に生物は皆「万世一系」です。誰にも両親がいて、その両親もさらに両親がいて…と祖先に繋がっているのですから、万世一系でない人などいません。
■Y染色体は、ヒトが持つ46本の染色体のうちの一つに過ぎず、しかも性の決定の他には大した遺伝子を持たない小さな染色体です。他の大多数の染色体は、男系だろうが女系だろうが世代毎に交雑していきます。Y染色体だけをもって万世一系の根拠とするのは、無理があります。
■Y染色体は男系を維持している限り神武天皇以来不変…だと思ったら大間違いです。確かに他の染色体に比べれば、世代の経過に伴う変化は少ないでしょうが、それでも不変な染色体なんてありません。染色体はDNAが折り畳まれた集合体です。例えるなら、遺伝子を野球選手とすると染色体はチームです。普通の染色体は世代毎にチームの半分の選手がトレードで入れ替わるけど、Y染色体のメンバーは入れ替わらない…と万世一系信者は考えるようですが、突然変異やウィルス感染などによってY染色体の遺伝子も入れ替わります。いわば、選手がある日ケガした(突然変異)とか、替え玉とすり替えられた(ウィルス感染)なんてことが起こるのです。

というわけで、Y染色体だけを取り立てて「万世一系」などと男系の正当性を主張するのは、科学的に見ればトンデモなことで、まさに信仰というものでしょう。まあ、キリスト教における十字架、イスラム教におけるコーラン、仏教における仏像など、宗教が何かの象徴を大切なものとして崇め奉る(だけど信者以外にはとるにたらない)ということは間々ありますから、Y染色体を信奉するのも同様のことと理解できますね。
それでもY染色体原理主義から抜けられない人には、ミトコンドリア原理主義の人がきっとお相手をしてくれることでしょう。ミトコンドリアは細胞内に共棲して好気性の代謝を行うバクテリア(ちゃんと遺伝子も持っています)で、母方からしか遺伝しません。Y染色体よりずっと、個体にとって重要な役割を果たします。ミトコンドリアが代々受け継がれるように、女系こそが「万世一系」に欠かせないのだ、と主張する人に対して、男系を主張する人はどう反論するのでしょうね。(ミトコンドリア遺伝を挙げてY染色体原理主義がナンセンスだと考える人はいるかしら、と検索してみたら、立花隆さんの秀逸なコラム を見つけましたのでご紹介します。)さらに、「現代においてはミームに比べれば遺伝子など取るに足らない。世襲にこだわらず、天皇家の風習や伝統を正し理解し実践できる者こそ後継ぎに相応しい」と主張するミーム原理主義者がいてもおかしくないですね。 

Posted: 日 - 12月 4, 2005 at 11:45 PM      コメントを読む/書く


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