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不正のチェックも大切なこと 



実験結果を改竄したり捏造した「研究成果」が相次いでいる という。「実験データは廃棄した」なんて言い訳をしているけど、それでは実験をしていないのと同じことじゃん。成果の捏造は科学者としてあるまじき由々しき事態で、一研究者として恥ずかしく思うと共に、データを解析して発表できるようにするまでには最新の注意が必要だと、自分を戒めなくては。読売新聞の社説では、「研究競争が激化していることが、事態を悪化させている可能性もある」と主張している。しかし、研究成果の捏造は昔からある根の深い問題で、今に始まったわけではない。研究者が第一発見者をめざして競争するというのは自然なことだし、研究資金やポストの獲得競争だって科学の水準を向上させるには必要なことでしょう。第一発見者と二番煎じでは、達成感も周囲の評価も雲泥の差なのだから、功を焦る気持ちは理解できる。
では、不正を防げないのは何が問題なのでしょうか。私は、他者の研究結果をチェックするという仕事が過小評価されていることが原因だと思います。研究論文が雑誌に掲載されるには、査読者(レフェリー)によるチェックをパスしなくてはならないのですが、レフェリーは匿名ですし無償なので、全く割に合わないのです。自分の研究時間を割いて懸命にチェックをしたところで、著者に恨まれるのが関の山です。査読は雑誌編集者以外の誰にも分かってもらえない孤独な仕事で、レフェリーの良識だけに委ねられているのです。これでは、チェックがおろそかになるのも無理はないでしょう。査読を斜め読みで済ませて、自分の研究時間を確保した方が、自分の成果は挙げられるもの。
良い査読には相応の評価を。それには、レフェリーを複数にして、レフェリー同士のピアレビューを行うべきだと考えます。さらに、レフェリーは可能な限り匿名でなく掲載後に公表するのがいいでしょう。そうすれば、不正を見抜けなかった場合にレフェリーも批判されるようになりますから、チェックするときの緊張感も増すと思います。 

Posted: 日 - 9月 25, 2005 at 11:54 PM      コメントを読む/書く


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