自己複製に一工夫自己複製する機能を持つ存在(これを自己複製子と呼びます)が生まれると、その自己複製子は複製できる条件がある限りひたすら指数関数的に増え続けます。これは単に物理的な現象であり、特に「目的」や「意志」などなくても起こることです。
例えば将棋倒し。一枚の駒が次の一枚を倒す、というサイクルでは増えませんが、1枚が2枚を倒すようにセットすれば、そのプロセスは立っている駒がある限り指数関数的に増殖します。原子力発電や原子爆弾の要因である核分裂反応では、ウラン235原子核に中性子が衝突することで3個の中性子と娘核に分裂してエネルギーを発生します。ここで発生した3個の中性子が別のウラン235原子核に衝突してまた核分裂を起こすという連鎖反応を繰返し、反応は爆発的に進みます。レーザー光やメーザー電波が強力なパワーに成長するのは、発生した光子が次の原子(または分子)に作用して同じ波長の光子を生成する、という誘導放射のプロセスを繰り返し、光子の数が指数関数的に増加するからです。このように、自己複製で増殖する現象は生物に限らず見られる現象です。 指数関数的な増殖は、増殖に必要な資源が尽きてくると飽和します。資源が常に一定量供給されるのであればロジスティック曲線 という関数のように頭打ちになります。有限な資源が枯渇すれば、減少して絶滅してしまうでしょう。 ところが、資源の枯渇を防ぐ解決策があります。一般に複製は「完璧」とは限らず、ある確率で複製は「失敗」してコピー元と異なるものができます。複製時のエラーは、自己複製の性能を低下させる方向にはたらくことが多いでしょう。そのようなエラーはまさに失敗で、次世代を産む確率が減るわけですから、世代が進む毎に失敗は消えていきます。一方で、次世代を増やす方向にはたらくエラーも、たまには発生します。上記のレーザー光の例について言えば、微妙な波長のずれが親の光子と消費する原子を棲み分けます。生物の場合であれば、突然変異によって発生した新世代が、親世代とは別の食べ物で生きていける性質を獲得する可能性があります。このようなエラーこそ、資源の枯渇を防ぎ、新たな増殖のフロンティアを開拓する「進化」の要素です。 自己複製によって増殖し、稀に起こる自己複製のエラーによって進化する。このような性質をもった遺伝子という自己複製子は、一度誕生したら滅多なことでは消滅しないでしょう。実際、地球上に生命が誕生してから35億年経過し、環境が激変したにも拘わらず、遺伝子は絶滅せずにますます増殖し多様化しています。種は滅びても、遺伝子は不滅と言っていいほど、したたかでたくましい自己複製子です。(この項続く) Posted: 木 - 10月 6, 2005 at 09:16 PM コメントを読む/書く |
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HaloScanサーバーの時計狂いは気付いたら直っていました。米国の夏時間が終わったからかな。(2004.12.13記)
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