比熱が負の世界(3)
K:
ところで、このような重力の系には面白い性質があるんですよ。この「はるか」シミュレーター
で「速度+5%」のボタンを押してみて。N:
「はるか」が遠くまで飛びますね。K:
そう、エネルギーと角運動量を与えたからね。で、軌道運動がゆっくりになったと思わない?N:
確かに…速度を増やすボタンを押したのに、全体的にゆっくりになりますね。K:
そう、ケプラー運動ではエネルギーを与えると速度が減るんだ。N:
何だか矛盾しているような気が…。K:
常識と逆ですよね。この系の「温度」が定義できるんだけど、分かりますか?N:
え、温度ってどういうことですか?K:
温度は、粒子の乱雑な運動の速さを表す指標ですよね。質量mの粒子の運動エネルギーは、平均速度がvなら3mv2/2ですね。これを温度に換算するにはボルツマン定数kを使って、kT/2
=
3mv2/2とするのでしたから、T
=
3mv2/k。速度が大きいほど温度Tが大きいわけです。N:
なるほど。K:
で、ケプラー運動では、「はるかシミュレーター」で見たように、エネルギーを加えると速度が減る、ということは…。N:
温度が下がる!K:
そう、逆に「速度-5%」のボタンを押してエネルギーと角運動量を抜くと、内側に落ち込んで速度が増すでしょう。エネルギーを抜くと温度が上がるんです。N:
おおー。K:
物体に注入したエネルギーの量と温度上昇との比例係数を、比熱と言いますよね。普通の物質はエネルギーを加えると温度が上がるから比熱はプラスです。でもケプラー運動だと、N:
温度が下がる…。K:
ということは、N:
比熱がマイナスだ。スゲー!K:
そうなんです。比熱が負の世界、これが自己重力系の特長なんですね。
Posted: 金 - 9月 15, 2006 at 11:55 PM
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