「伝わる!」説明術梅津信幸著『「伝わる!」説明術」
を読了。人に説明するのが下手な私には興味深い主題だし、この著者の前作
は目からウロコが落ちるお役立ち本だったので、期待して読んだ。「なぜ、あなたの説明は伝わらないのでしょうか。(中略)それは、あなた自身がよくわかっていないからです」という冒頭の命題は鋭い。確かに、他人に教えることができて初めて「理解した」というレベルなのだと思う。本書では、アナロジー(たとえ話)を利用して説明することを徹頭徹尾訴える。説明するには物事の相互関係を抽出して伝えることが肝要であり、相互関係だけを抜き出して物事を身近なものに置き換えたものがアナロジーだからだ、という主張だ。人が物事を理解するときには、必ずアナロジーに変換している、とまで言うのだ。確かにアナロジーは理解の助けになることもあるだろう。しかし、アナロジー万能という主張でよいのだろうか?類推しようのない新概念を伝えるときには、演繹的にゴリゴリと論理を進めるしかないのでは?例えば、「輝度分布とビジビリティとは2次元フーリエ変換の関係にある」というVan
Cittert-Zernikeの定理を説明するのに、アナロジーが手助けとなるのだろうか?仮に「電気信号とスペクトルとの関係がフーリエ変換であるのと同様です」なとど例えたら、かえって聞き手が混乱するのが関の山であろう。まあ、そういう限界を知った上で部分的にアナロジーを使うのがいいのでしょうね。本書は「伝わる説明術の決定版」(カバーより)というより、「伝わる説明術:アナロジー編」といったところではないでしょうか。
細かいことですが、p.41 「わからないのは相手の責任です」は、「わからせるのは相手の責任です」とすべきでしょう。pp.73 - 82 触媒を使ってポテンシャルの山を乗り越えやすくするという図は、同じ概念を「トンネルを使う」「山の高さが低くなる」と異なる例えを用いていて、冗長であるばかりか混乱します。五つある似たような図は、一つでいいのでは。p.100 図19「アナロジーを使うことは、ホッケーゲームに似ている」の例えは分かりづらいです。無理なアナロジーの例になってしまっています。 Posted: 木 - 9月 1, 2005 at 11:53 PM コメントを読む/書く |
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HaloScanサーバーの時計狂いは気付いたら直っていました。米国の夏時間が終わったからかな。(2004.12.13記)
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