数学ガール結城浩
著「数学ガール
」を読了。著者のwebサイト
内で公開されていた数学にまつわる読み物のうち、「僕」「ミルカさん」「テトラちゃん」の三人の高校生が登場するミルカさんシリーズ
を書籍化したものだ。ストーリーはコメディタッチだけど、内容は素数,
振動と回転と複素平面,
フィボナッチ数列と母関数,
コンボリューション(畳み込み),
ζ関数など、数学の面白さ・不思議さが伝わる項目が目白押しだ。本書は、数式をきちんと手抜きせずに記述しているところが素晴らしい。数列におけるコンボリューションが、対応する母関数の世界では積になっているところは興味深い。コンボリューションを信号解析の分野で学んだ私には、コンボリューションのフーリエ変換がフーリエ変換の複素数共役積に対応する、というコンボリューション定理が、数論でも現われるところが驚きであった。また、よくフーリエ級数展開の応用として扱われるバーゼル問題
が、本書でsin
xのテイラー展開と因数分解によって示される話の展開が美しかった。
専門書でない数学についての書籍は、数式を入れるほど売上げが落ちると言われているためか、数式を端折ることが多いけど、それでは却って分かりにくく歯痒く感じることが多かった。しかし、本書には数式が手抜きせずに出てきます。それでも増刷されているということは、数式が書かれても売れるということを証明したわけですね。数式に拒否反応を示す人が多いのは、式の意味するところをきちんと伝えていなかったり、式の展開に飛躍があって、付いて行くのが難しいからだろう。翻って本書では、式の意味について「僕」の一人語りや「テトラちゃん」との掛け合いによって、読者が置いてきぼりに陥りそうな箇所をフォローしてくれる。数式の展開も丁寧なので、苦労せずに数式部分も追っていくことができる。数学に熟知し、かつ語り部としても優れている筆者の力量が見事です。遠山啓の「算数の探検 」「数学の広場」シリーズに夢中になった私としては、高校数学以上の領域についての続編を読んだような感覚も感じました。 知的興奮に満ちた数の宇宙を味わいたい人にお奨めです。 Posted: 日 - 7月 8, 2007 at 01:56 PM コメントを読む/書く |
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