もうすぐ日の出

ハイマツやシャクナゲの中を緩やかに下ってゆく。前方に偃松尾のガレ場がよく見える。やがて苔生すシラビソの樹林帯に入り、椹島へ下る道を左に分け、平坦な稜線を進む。樹林帯の中でご来光。高曇りだけど富士山のシルエットが見えるのが嬉しい。

富士山のシルエット

シダが覆う道

ガレ地から再び樹林帯に入り少し登ると、CATV用の中継アンテナが立つ生木割山頂に6h06mに到着。展望も得られない山頂なのでそのまま通過しよう。コメツガの疎林にシダが地面を覆う歩きやすい道。緩やかなアップダウンを繰り返して、7h02mに天上小屋山を通過。ここも展望がないので先に進む。本当は水をゴクゴク飲みたいところだけど、100mlだけ飲んで残り100mlをキープしておく。

蝙蝠岳・塩見岳

悪沢岳

白峰南嶺

コバノイチヤクソウ

徐々に赤石山脈を覆っていた雲が減ってきた。視界の開けた場所からは、赤石岳や悪沢岳を望むことができる。昨年歩いた蝙蝠岳から塩見岳に続く稜線を眺めると感慨深い。
そんなトラバース道歩きが1時間程続くと、8h29mにひょっこりと林道に出る。

転付峠の幕営地

所々土砂崩れで埋められたりガレ場になっていたりと荒れ放題の林道を進んでゆくと、9h02mに昨年幕営した場所に到達。もう、のどがカラカラだ。二軒小屋への道を左に分け、転付峠に9h06mに到着。水場はここから5分ほど新倉方面へ下ったところだ。展望台に寄ることもなく、水場へと一目散。この5分の道のりは30分程にも感じた。

給水しながら、男性（Hさん）とそれぞれの山歩きを情報交換。彼は8日間に亙って蝙蝠岳・塩見岳・悪沢岳・赤石岳と歩いてきて、今日が下山日なのだという。魅力的なコースを歩いてきて満足げな表情が羨ましい。
水場近くの幕営地に腰掛けて一服してから9h30mに再起動。カラマツ林の中のつづら折れをずんずん下る。高度を下げるのはあっという間だな。ヨモギ沢とアザミ沢の出合いからは涼しい沢筋を進む。保利沢出合に10h40mに到着。転付峠で会った人に再会する。
ここでお茶やお菓子を交換しつつ一緒に休憩して、Hさんの山行の様子をお聞きすることができた。蝙蝠尾根を登り詰めて四郎作沢ノ頭で森林限界を越えたときの感激など、去年自分が体験したので強い共感を覚える。蝙蝠尾根の稜線上で台風をやり過ごした話とか、三伏峠から中岳避難小屋まで一日で駈け抜けた話などを聞くことができた。さらに、過去の山歴に話が及んだ。白峰南嶺の笹山（黒河内岳）を歩いたこととか、光岳から寸又峡まで林道を延々40km歩いた話など、実に興味深い。とはいえバスの時間もあるので余りゆっくりしていられないと言うと、「車で来ているので、よかったら乗っていきませんか」と言って下さった。ヘルシー美里の温泉に寄って、その後下部温泉の駅まで送って下さるという。とてもありがたいことだし、もっとHさんと山の話をしたかったので、お言葉に甘えて載せてもらうことにした。

ヘルシー美里に連れて行って頂き、汗を流してさっぱり。その後下部温泉駅まで送っていただく間も、山談義に話が咲く。黒河内岳の北峰から南峰に立つダケカンバを見ると面白い、なんて話も聞くことができた。下部温泉駅で丁重にお礼を述べて別れる。ちょうどタイミングよく甲府行きの特急「ふじかわ」がやって来たのに飛び乗り、帰途についた。

ヘルシー美里