キタダケソウ

仙丈ヶ岳・北岳 山行記録 #2/2

2004年6月19 - 20日


ガスで展望のない北岳に登頂し、東側斜面に咲き誇るキタダケソウに会うことができました。両俣小屋から北沢峠までの12 kmの林道歩きは結構堪えました。

第0日 (6月18日) 府中バス停−仙流荘

第1日 (6月19日) 北沢峠 → 仙丈ヶ岳 → 野呂川越 → 両俣小屋

第2日 (6月20日) 両俣小屋2h05m → 中白峰沢ノ頭取付点(左俣大滝)4h15m → 中白峰沢ノ頭5h35m → 小太郎尾根6h20m → 北岳山頂6h34m → キタダケソウ自生地6h48m/7h21m → 中白峰沢ノ頭8h00m → 中白峰沢ノ頭取付点8h42m → 両俣小屋9h30m/10h20m → 野呂川出合12h05m → 北沢峠12h52m

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23h30mに起床。南風が強くなって湿気を感じることから、天候の悪化を予感する。案の定、朝食の準備をしているうちに雨がポツポツとテントを叩き始めた。やる気なくすなあ。今日は昼食の調理の時間がないので、朝食で一日分のカロリーを賄うべく、マルタイ棒ラーメンに餅を鬼のようにぶち込んで腹に詰め込む。ついでにゼリーも食べておこう。サブザックに水と行動食とカメラを入れ、ザックの天蓋にヒップベルトを通してウェストポーチとして身に付け、雨着とスパッツで完全防備して、2h05mに出発。

真っ暗な中、野呂川左岸へ橋を渡って河原をゆく。道標や赤ペンキは暗やみでは見つからないので、徒渉点を見失わないようにキョロキョロしながら慎重に歩みを進める。原則として河原を歩き、行き詰まったら高巻くか徒渉するかのルートを探す。怪しくなったらすぐに引き返す。高巻く道は踏み跡がはっきりしているので分かりやすいが、河原歩きは暗やみの場合判別が難しい。徒渉すべきか悩むことが何度かあった。勢いをつけてジャンプするしかない徒渉点もあり、空身でなかったら足元はびしょ濡れになったことだろう。

中白峰沢ノ頭

中白峰沢ノ頭を巻く

左俣大滝手前の中白峰沢ノ頭取付点に4h15m到着。コースタイムで1hのところを2h10mかかっている…遅いなぁ。暗やみのルートファインディングに時間を要したためで、早立ちの意味がないじゃん。まあ、やっと仄明るくなって来たので、もうヘッドランプに頼らなくてもいいだろう。雨もあがったので、左俣大滝の見える展望台にてレインウェアをしまう。
中白峰沢ノ頭へはかなりの急登で、左俣大滝からは標高差630mを一気に登る。道はやや荒れているものの快調に高度を稼ぐことができる。始めのうちは落葉松やコメツガなどの針葉樹が多いが、高度を上げるにつれて岳樺などの広葉樹が増えてくるとともに、コイワカガミが鮮やかに咲いている。やがて森林限界を越えてハイマツ帯を登るようになると、霧滴を含んだ強風が谷底から吹き上げてくるので、体の右側が濡れるようになる。でも追い風なので歩みを助けてくれるのがうれしい。

5h35mに標高2841mの中白峰沢ノ頭を巻いて、稜線歩きとなった。ガスで展望の効かない中、露岩とハイマツの道を行く。ハイマツがたっぷり露を含んで、歩くうちにひざから下がびしょ濡れになる。まだ冬毛の残る雷鳥が頭上を飛んで行って、斜面下方に舞い降りるのを目撃。強風の中であんなにうまく着地するのだと感心する。「風の谷のナウシカ」で、ナウシカがメーヴェで着地するシーンを思い出した。
展望のない稜線歩きだが、ハクサンイチゲの大群落やミヤマオダマキやミヤマシオガマの花が退屈になるのを防いでくれる。

ミヤマシオガマ

ミヤマシオガマ

北岳山頂

北岳山頂に到着

6h20mに小太郎尾根に合流。ここからはよく知ったルートだ。6h34mに無人の北岳山頂に到着。展望がないけど仕方ない。以前に来たときには無かったお地蔵さんが祀られているのは、山頂で自殺した人の供養かな?山頂でのんびりする余裕もないので、先を急ぐ。

下山後に調べたら、2003年6月20日に、この写真にある山頂標識で36歳(現在の私と同い年)の男性が首つり自殺をしたのでした。私はちょうど一回忌の命日に山頂を訪れていたのですね。ご冥福をお祈りします。

露を集める草

露を集める草

キタダケソウの咲く南側斜面に6h48mに到着。おお、たくさん咲いているぞ。ハクサンイチゲ8:キタダケソウ2くらいの個体数比かな。もうしおれかけの株もあり、確かに季節の進行が早い。イワベンケイやミヤマシオガマやイワオウギの写真を撮って7h21mに出発。北岳山頂に登り返し、来た道をそのまま戻る。

キタダケソウ

キタダケソウ

キタダケソウの咲く斜面

キタダケソウの群落

イワオウギ

イワオウギ

8h00mに中白峰沢ノ頭を通過。左俣大滝への急坂を、濡れて滑りやすい岩や木の根に注意しながら慎重に下る。ジョウビタキやウソなどの美しい野鳥を見ることができたが、写真を撮る余裕がないのがとても残念。8h42mに左俣大滝に到着。登りでは暗くて見えなかった滝がよく見える。左俣の河原沿いの道は、明るくなった今では迷いようがない。河原の石には赤ペンキが記されており、徒渉点には「ワタレ」と朱書されている。9h30mに両俣小屋に到着。小屋に立ちよって、無事に降りてきたことを報告する。

左俣大滝

左俣大滝

テントを撤収と荷造りを急がなくてはいけないのだが、ここでなぜかやる気を喪失し、撤収作業が捗らない。テントシートに溜まった雨水をスイムタオルでふき取ったり、ウェストポーチにしていたザックの天蓋からヒップベルトを外したりするのに手間取り、出発したのが10h20mと遅くなってしまった。北沢峠までの林道は12 kmあり、コースタイムでは3h20mだから、13h00m発のバスに乗るためには40mも時間を詰めなくてはならない。頑張って早足で進むしかない。ところが、林道に入るところで間違って河原沿いに降りてしまい、引き返すのに5分をロスする。かなりまずい。しかも時折雨が降るようになってきた。ザックが濡れて重くなるのもまずいので、傘をさして歩く。雨は降ったり止んだりで、そのたびに傘を広げたりたたんだりするのが面倒だ。野呂川出合に12h05m到着。ここからは上り坂で早足で歩くのはかなり疲れる。はるか前方に二人連れの先行者を発見。きっと13h00mのバスに乗ろうという人たちだろうから、追いつけば間に合うだろう。もう、心拍数もLTも関係なしに、競歩をしているつもりで急ぐ。ここで頑張らねばこれまでの2時間の早歩きが無駄になるのだ。高橋尚子や野口みずきは42 kmを2h20mで進むというのに、たったの12 kmにこんなに時間がかかるのはどういうわけだ、と自分にハッパをかける。やがて、夫婦らしき中年二人連れの先行者に追いつく。「13時のバスですよね」と声をかけると、「え?13時何分ですか」と聞き返される。
「13時ちょうどですよ」
「えーっ!そんな、無理だわ。次は何時かしら」
「さあ、分からないですけどかなり後だったような」
「どうしよう、間に合わないわ」
「いや、頑張れば何とか」
と言い放って先を急ぐ。目標にしていた二人は13h00mに間に合うように歩いていたのではなかったのか…と愕然とする。それでも、先を急ぐ私に二人も早足で追随する。頑張っていっしょに13h00mのバスに乗りましょう。12h42mに仙水峠からの道に合流する。ここからは10分だから、何とか間に合いそうだ。しかしホッとしたためか、あるいはちょうど脱水症状を発症したのか、脚に力が入らなくなった。二人に追い越され、とても付いていけない。
フラフラになりながらも最後の登りをこなして、12h52mに北沢峠に到着。2-30人ほどの登山者がバス停に並んでいる。とにかく給水だ。長衛荘の水場で水をゴクゴク飲み、ペットボトルに水を詰めていると、バスがやって来た。最後尾でバスに乗車したので、補助席の先頭に座った。あ、左隣の席に座るは行きの18日にJRバスで会って無料休憩室で一夜を同宿した人(Nさん)だ。再会を喜び、いろいろと話しかけて下さるのだが、こちらが疲労困憊でマトモに返事ができず、失礼しました。それでも残った食料を摂取しているうちに血糖値が回復してきたのか、何とか会話ができるようになってきたので、お互いの山行を報告し合う。右隣の中年の女性(Yさん)たちも話の輪に加わって、楽しいひととき。
仙流荘で入浴し、洗いざらしの衣類に全て着替えてさっぱりし、休憩室でお茶を飲みながら、Nさんと山談義して過ごす。Yさんも話に加わり、おせんべいを頂いた。16h00m発のJRバス南アルプス号で帰途に着く。

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初出 : 2004年6月26日, 最終更新日 : 2004年6月26日

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