奥秩父 金峰山・甲武信岳 山行記録 #2/22004年7月24 - 25日 幻想的な朝の苔むす森をひたすら歩く。奥秩父の核心は人に会うこともなく、静けさを十分に堪能できる。甲武信岳・徳ちゃん新道を経由して西沢渓谷に降りた。 |
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第1日 (7月24日) 瑞牆山荘 → 富士見平 → 金峰山 → 大弛峠 第2日 (7月25日) 大弛峠4h00m → 北奥千丈岳5h08m → 国師ヶ岳5h22m → 国師ノタル6h51m → 東梓7h31m/7h50m → 両門ノ頭8h27m → 甲武信岳10h04m/10h10m → 木賊山10h43m → 西沢山荘13h10m → 西沢渓谷入口13h30m/14h37m −(山梨交通バス)→ 塩山 |
2h00mに目が覚める。トイレと水汲みに行こうと外に出ると満天の星空。銀河を接線方向に見通すはくちょう座付近で天の川はくっきりと明るく、系外銀河のM 31も簡単に見つけられる。テントに戻り、マルタイ棒ラーメンに餅をぶち込んだ朝食を摂る。荷物をまとめ、テントを畳んで4h00mに出発。 |
もう薄明が始まっていて、蒼暗い空の下、ヘッドランプの灯を頼りに大弛小屋の脇を通って東進する。木道が整備された道を少し登ると夢の庭園への分岐。ザックをデポして行って見る。木道の階段を5分ほど登ると、岩塊斜面にコメツガの若い低木が育ちつつある夢の庭園に出る。野鳥たちの囀りが賑やかな中、北東の山ぎわが朝焼けに染まり、金星が昇ってくる。夜明け前にしか見られない幻想的な光景に言葉を失う。 |
暁光が増す中、高度を上げてゆくとコメツガの背丈も徐々に低くなって展望が開けてきた。前国師手前にある露岩の展望ポイントで、4h48mに日の出を迎える。 |
このときだけ富士山まで見通せる遠望が得られた。朝日に照らされた金峰山も美しい。 |
前国師を抜け、北奥千丈岳への分岐にザックをデポして空身で行ってみる。5h08mに北奥千丈岳に登頂。標高2601mで奥秩父最高峰である。山並が斜光線を浴びて幻想的だ。 |
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デポ地に戻り国師ヶ岳方面へ進む。シラビソやシャクナゲの深い森と、湿性植物のミヤマバイケイソウが混在しているという植生は面白い。ゴゼンタチバナは花期を過ぎているが、まだ見映えのする株もわずかに残っている。国師ヶ岳に5h22mに到着。北奥千丈岳が目の前に聳える。 |
富士山は早くも雲に隠れようとしている。ここ数日、水蒸気が多い日が続いているから仕方ない。国師ヶ岳からは急坂を下る。道幅が狭く、夜露をたっぷり含んだシラビソの中を泳ぐように歩くとびしょ濡れになるが、それもまた気持ち良い。木漏れ日の光線が奥秩父核心部の朝を演出しており、その中を誰にも邪魔されることなく歩けるのは、何という贅沢だろう。 |
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植生がやや単調になってきて、シラビソとシャクナゲが寡占する。高山植物に乏しい稜線であるが、そんな中にほぼ終わりかけのシャクナゲの花を見るとハッとして見入ってしまう。まだ色の薄いルリビタキの若はあまり人を恐れないようで、そばを通っても構わずに囀り続けてくれるのが嬉しい。 |
6h51mに国師ノタルを通過し、道は下りから上りに転ずる。7h11mに2224m標高点を通過する頃には、稜線を霧が覆い始める。7h31mに東梓に到着。ここで大休止し、クッキーとプルーンを食べて燃料補給。7h50mに出発。 |
両門ノ頭の露岩に8h27mに到着。展望ポイントで、ガスを突いて甲武信岳がちらと見える。岩の隙間に咲くミヤマシャジンが美しい。その先はまたも単調な植生の苔生す森で、同じような光景にやや飽きてくるが、そんなときに最盛期を過ぎたギンリョウソウに出会う。 |
千曲川源流からの道を合わせる最後のコルを9h44mに通過すると、そちらから登ってくる単独の男性に遭遇。今日初めて出会う人だ。甲武信岳への最後の登りをこなして、10h04mに登頂。ガスに覆われて展望がほとんどないが、西側のこれまで歩いてきた稜線が辛うじて見える。山頂は騒がしく、タバコの煙は漂ってくるし、果物の皮を投げ捨てるなどマナーの悪い人もいる。こんなところに長居は無用と、早々に立ち去る。予定では三宝山を往復するつもりだったが、ガスで展望が得られそうにないので、さっさと西沢渓谷に降りよう。 |
甲武信小屋への下り道にてコマドリ(?)が間近に現われてくれた。甲武信小屋を10h25mに通過し、木賊山へ登り返す。木賊山に10h43mに到着。シャクナゲやシラビソに覆われて展望はないが、人影もなく静かなので、ここで休憩した。 |
数分ほど東進すると戸渡尾根が右に分岐するのでそちらに進む。シャクナゲやダケカンバなどが混成する中の急坂をどんどん降りて標高を減らしていくとガスが抜けて晴れてきた。陽射しを浴びて暑くなってくる。シャクナゲのトンネルを抜けるところは、「千と千尋の神隠し」の生け垣を抜けるシーンのようだ。 |
稜線の雲はいよいよ厚く、まるでブラスバンドの練習のような雷鳴が背後から聞こえてくる。やはり夏山で午後の稜線は雷の危険性が高い。三宝山をすっとばして下山してよかった。 |
やがて現われる急斜面のつづら折れを慎重に降りると、13h10mに西沢山荘に降り立つ。観光客の多い西沢渓谷の遊歩道を歩いて13h30mに西沢渓谷入口のバス停に到着。14h37m発のバスを待った。 |