苗場山 山行記録2003年10月11 - 12日 苗場山 (2145m) は山頂に広大な湿原が広がる個性的な山として有名。日帰りでも十分行ってこれる山だが、山頂の湿原でゆっくり過ごさないともったいないと考え、1泊2日の行程にした。山頂は幕営が禁止されているので、遊仙閣か山頂ヒュッテのどちらかの小屋に宿泊を余儀なくされる。遊仙閣に電話したところ予約できたが、連休なのでかなり混雑するそうだ。 |
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武蔵境5h21m発の中央線に間に合うべく自転車を漕ぐ。西国分寺で武蔵野線に、武蔵浦和で埼京線に乗り換えて大宮へ。6h37発「とき」はさすがに連休初日とあって自由席に空席はなく、デッキに立つ。北へ行くほど空が明るくなり、上越国境を越えると日差しが出ている。越後湯沢に7h25m到着。
駅前でタクシーに乗ろうとしている二人組を見つけて同乗を願うと、二人組は快諾するもののアサヒタクシーの運転手は「乗り合いバスじゃないんだからやめてくれ」というのに驚く。こういう横柄なタクシーは運行しないでほしい。不快に思ったので他の同乗者を見つけて別のタクシーに乗る。こちらのタクシーの運転手は気前よく快諾し、道中楽しむことができた。7h58mに和田小屋到着。5040円の料金を同乗者と折半する。 |
和田小屋から出発 |
たくさんの登山者が到着し、出発してゆく。準備体操を済ませて8h15mに出発。スキー場のゲレンデを横切ると、木の階段や木道などがよく整備されている登山道だ。 |
中尾根南面の紅葉 |
紅葉の盛りを過ぎているようで灼けた葉が多いものの、それでも十分に色彩を楽しむことができる。特に険しい箇所もなく、快適な山道。すぐ後ろの夫婦が鳴らす鈴の音がうるさいので少しペースを上げて離れよう。
下の芝に9h00m到着。小草原の中の休憩所で、ドウダンツツジの紅葉が美しい。ナナカマドは完全に紅葉を過ぎて葉が枯れている。ヤマウルシやヤマモジジは丁度今が紅葉真っ盛り。 |
中の芝の斜面 |
さらに進むと越後湯沢から新潟方面の街を見下ろすように展望が開けてきた。やがて、9h33mに中の芝の斜面に出るとたくさんの登山者が休憩している。ドウダンツツジと岩が点在する草原で、東側の展望が開けている。平標山-谷川岳の稜線から、日光白根山,
尾瀬の至仏・燧, 巻機山, 越後三山までが一望の下に。手前にはカッサダムも見下ろすことができる。休憩も兼ねてしばしその展望を楽しむことにしよう。
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股スリ岩方面を振り返る |
9h50mに中の芝を出発。木道の登りは快適である。小松原湿原への道を右に分け、やがて神楽峰に続く稜線に出るとほとんど平らな道になった。股スリ岩を越えて少し行くと標高2029.6mの神楽ヶ峰に10h18mに到着。いちおう三角点はあるが、不遇な山頂である。
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雷清水から見上げる苗場山 |
ここでようやく苗場山の姿を目にすることができる。標高で言えば苗場山頂までの差はわずか120mだが、一旦1880mの鞍部まで降りたのちに260mを登り返さなくてはならない。まあ、山ではよくあることだが。それにしても神楽ヶ峰から眺める苗場山は普通の山となんら変わりない姿で、あの山頂に広大な湿原が広がっているとは想像し難い。鞍部に降りる途中で雷清水という湧き水が出ているのでここで休憩し、2リットルのペットボトル一杯に給水。冷たくておいしい水だ。苗場山を見上げるようになり迫力満点。取り付いている登山道はかなり急である |
鞍部の斜面は緑の笹原に紅葉・黄葉が点在していて、よく設計された庭園のようだ。苗場山への急登をゆっくりと登る。眺めを楽しみながらの登りは疲れを感じさせない。振り返ると神楽ヶ峰の斜面も日本庭園のようで素晴らしい。その奥には上越国境や奥日光・尾瀬の山並が連なっている。 |
神楽ヶ峰を振り返る |
11h16mにひょっこりと山頂の台地に出ると眺めが一変。広大な湿原が目の前に広がっている。ガイドブックなどで予習してきたとはいえ、この眺めには驚かされた。針葉樹に縁取られた湿原に池塘が点在する様は「神のお苗場」という表現を越えている。雲ノ平の湿原ともまた違った個性であり、雲ノ平を無為自然とするなら苗場山は精緻な設計者の存在を想像させる。 |
上越国境方面の眺め |
山頂台地の背景がまた素晴らしい。南には上ノ倉山・白砂山・佐武流山が並び、富士山も山頂だけが見える。その右側には浅間山が噴煙を上げる。さらに草津白根山・志賀岩菅山と続く。焼額山はスキー場があるので同定しやすい。その奥には穂高・槍から立山に続く稜線がはっきりと見える。なんと贅沢な借景だろう。まさに日本庭園の設計図である。
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遊仙閣に到着 |
池塘が点在する中も木道をのんびりと歩き、本日泊まる遊仙閣に到着。山頂は小屋の奥にある。針葉樹に囲まれた展望のない山頂だが、防風林に囲まれているようなものなので、大勢の人が昼食を摂るなどくつろいでいる。記念写真を撮る人も多数。そこから細い道を抜けると苗場山頂ヒュッテがある。こちらの方が大きな小屋で、湿原の眺めもよい。しかし強風が吹いているためテラスに出ている人はいない。
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苗場山頂に広がる湿原 |
湿原を南側に散策してみよう。緩やかに下る木道をポクポクと進む。針葉樹の囲みに入るとそこは風が適度に弱まる。しかし木道だけで広場のようなものはないので、昼食に適当な場所が見当たらない。それにしても眺めは絶景が続く。 |
湿原南部から山頂を見返す |
山頂台地の南端にたどり着いた。この先は赤湯に続く岩場の急坂なので、引き返す。緩やかとはいえ上り坂なので、戻るのはちょっとしんどい。結局、防風の効いた遊仙閣裏手の山頂で昼食にしよう。メニューは定番となりつつあるチーズフォンデュ。コンロの火でチーズを溶かした中にフランスパンや茹で野菜(アスパラガスとオクラ)をぶち込んで、アツアツのまま食べる。あっという間に平らげてしまった。食後はドリップコーヒー。雷清水で汲んだ水で淹れる贅沢。
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展望台から北西方向の眺め |
食後に遊仙閣にチェックインし、ザックを置いて散策に出かけよう。まずは山頂ヒュッテの裏手にある展望台へ。北から西側の眺めが良く、すぐ目の前に鳥甲山や妙高・火打が迫り、背景に立山から白馬に続く北アルプスがよく見える。すぐ足下の猿面山の紅葉も見事。出会わせたオバサマ方に、山座同定の説明をさせられる。 |
小赤沢方面にある湿原と坪場のピーク |
今度は山頂台地の西端に行ってみよう。小赤沢方面への道を進むと、一旦湿原が途切れ、樹林帯の中を道が通り抜ける。その先には再び小湿原があり、坪場という小ピークの紅葉がまた美しいので行ってみる。
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帰る途中に、苗場神社への分岐があったので寄り道してみた。存分に遊んでちょっと疲れたので、遊仙閣に戻る。夕暮れまで本を読んだりウトウトして過ごす。 |
苗場神社 |
5h30mに食事のアナウンス。夕食はカレーで、北アルプスの山小屋に比べると貧相なメニューだが、贅沢は言うまい。一応お替わり自由である。食後に、展望台まで夕焼けの写真を撮りに行く。寝場所に戻ると隣のオヤジが高いびきで寝ている。今日は布団1枚の面積に二人ずつという混雑ぶりなので覚悟はしていたが、やはりうるさくてかなわない。これだから山小屋は嫌いなのだが、テントは禁止されているそうなので仕方がない。しかし、小屋の横には3張りほどのテントが幕営していた。こんなことなら予約せずに来てテントを張ってしまえば良かったかもしれない、とイケナイことを考える。
いびきオヤジの横で耳栓をして本を読んでいると、階下の食堂で苗場山のビデオ上映が始まったらしく、いびきオヤジも眼を覚まして観に行った。今がチャンスだ。このスキに布団をかぶって眠りについた。 目が覚めると午前1h30m。腰が痛い。昨日はしゃいで歩き回りすぎた上に、せんべい布団で寝返りも打てない狭さのためだろう。もう絶対混雑する山小屋には来たくない。腰の痛みに耐えながら再び眠りにつく。 |
霧の中を出発 |
5h30に朝食のアナウンス。小雨が降っている。ハムと漬物の貧相な食事だが、文句は言うまい。今日は小松原湿原を通って結束まで9時間の行程を予定していたのだが、雨に躊躇する。それに腰が痛い。ともかく出発の支度をする。
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鞍部から神楽ヶ峰までの登り返しではすこし腰痛が緩和した。神楽ヶ峰山頂を過ぎたところに、「ドラゴンドラ乗場まで約3時間」という標識が立っている。今日は営業しているようで、こちらに降りることも考えたが、小松原湿原の魅力は捨て難いので通り過ぎる。股スリ岩を越えるところで腰をひねると激痛が走る。
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小松原に向かう道 |
雨の中の下りは、腰痛も手伝って楽しくはない。それでも紅葉は雨に濡れて彩りを増しているように思え、励みになる。ぬかるみで靴は泥だらけとなり、その状態で岩や木道を歩くととても滑りやすい。いい加減腰の痛みに耐えられなくなったころに、9h50mにようやく和田小屋に戻ってきた。
これから登りはじめる登山客を乗せてきたタクシーがちょうど到着したので、越後湯沢まで乗せてもらう。同乗者がいるとよかったのだが、自家用車で降りる人ばかりなので、一人でタクシーに乗る。運転手さんは大清水トンネルの建設などにも携わったとのことで、経験談を道中聞くことができた。駅の近くの温泉で下ろしてもらう。 駅まで徒歩5分ほどの温泉は、入浴料300円と安価で、2 - 3人しか客がおらずゆっくりと疲れをいやすことができた。湯から上がると腰痛がほとんど消えていた。12h06m発の「とき」は自由席でも十分空席があり、ゆったりと帰ることができた。 |