尾瀬 燧ヶ岳・黒岩山 山行記録 #1/22004年6月5 - 6日 2週間前に鬼怒沼から尾瀬沼を目指したものの黒岩山南西面で道を見失って撤退してからというもの、どこが正しいルートなのか、どのように道を見失ったのか、気にかかっていた。記憶の確かなうちに雪融けを待って再訪したいと考えていたところ、再挑戦の機会がやってきた。 |
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第1日 (6月5日) 北千住0h08m−(東武・尾瀬夜行2355)→ 会津高原3h18m/4h00m−(会津バス) → 尾瀬御池5h24m → 広沢田代6h08m → 熊沢田代6h48m → 俎嵓 8h45m → 柴安嵓 9h02m → 俎嵓 9h20m → ミノブチ岳9h48m → 浅湖湿原11h30m → 長蔵小屋11h44m/12h40m → 小淵沢田代13h44m → 只見幹線竣工記念碑14h18m → 赤安清水15h25m |
東武鉄道の「尾瀬夜行2355」は、北千住駅を定刻0h08mに発車。始発の浅草駅を出発する時刻が23h55mなのでこの名称が付いている列車だが、あと1分遅らせれば燧ヶ岳の標高になるのにと、どーでもよいことを考える。車内で眠りたいので、騒いでいる団体さんに「静かにしてもらえませんか」とお願いすると、車内は静寂になり、熟睡できた。 |
5h24mに尾瀬御池に到着。広い駐車場には多数の車が停まっており、登山者で賑わっている。準備体操を済ませ、駐車場を横切って出発。登山口ではゴミ回収用のポリ袋を配布していた。ポリ袋自体がゴミではないかとも思うのですが、明日の雨に備えて防水袋として有り難く頂戴しよう。 |
6h07mに広沢田代に到着。樹林帯から青空広がる湿原に出る、えも言われぬ解放感。ミズバショウやタテヤマリンドウの花がちょうど見頃。池塘の点在する中の木道を歩くのは楽しい。 |
再び樹林帯の急登で高度を稼ぐ。1986m峰からは目指す燧ヶ岳が聳える。すぐに熊沢田代の湿原に出ると、池塘を擁する燧ヶ岳の雄姿が見事だ。さらに登って振り返ると、見下ろす熊沢田代の向こうに会津駒ヶ岳がどーんと構えている。「きてよかった」というひとりごとが漏れる。 |
燧ヶ岳への急登に取りつく。山頂に向かって南南西へまっすぐ伸びる雪溪を、単独行者と二人連れのパーティが登っている。正規の登山道は南南東方向へトラバースしているのだが、雪溪の直登も楽しそうなので、アイゼンを着けて先行者の後を追ってみた。ざくざくと高度を稼ぐ。ところが、雪溪を登り詰めると薮が待っている。男性二人連れパーティが雪溪終了点から直登しようとして薮に阻まれて戻ってきた。東方向に単独行者が通った跡があるので、私も加わって三人で薮をトラバースする。ハリブキのトゲが刺さる痛みに耐えて進むと、東隣の雪溪に出た。この雪溪はさらに上まで続いているので登り詰める。またしても薮漕ぎで東へトラバース。やっと先行者(中年女性:Oさんとします)に追いついた。トップを代わって薮漕ぎし、さらに東隣の雪溪に出る。すこし下ったところで正規ルートのトラバースが見えたので、ようやく正しい道に復帰。余計なルート探索などしないことですね。でも、薮漕ぎしてきた4人の間に妙な連帯感が生まれた気がする。Oさんは3人のパーティで来ていて、仲間が「戻れ」と言うのに一人外れて雪溪を直登してきたというのに驚く。はぐれたメンバーに会ったら状況を伝えてくれと、メッセージを託された。 |
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そこからほんのちょっと登っただけで、ひょっこりと俎嵓(まないたぐら)に8h45mに登頂。 山頂からは360°の大パノラマが広がる。居合わせた、会津若松からいらしたというご夫妻から、「いい天気ですね。富士山も見えますよ」と言われて振り返ると、確かに霞を突いて姿がはっきりと。甲斐駒や北岳, 八ヶ岳, 苗場山なども見える。山おたくの血が騒ぎ、山座同定を楽しむことができた。北方向には守門岳, 浅草岳, 会津朝日岳, 会津駒ヶ岳など、見果てぬ会津の山々を望める…という山座同定を会津若松のご夫妻に教えてもらった。眼下に青い湖水を湛えた尾瀬沼も美しい。そして西には柴安嵓(しばやすぐら)が聳え立つ。こんな好天時に山頂に居られることが嬉しくて、写真を撮りまくる。 |
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一通り眺めを楽しんでから、空身で柴安嵓に行ってみよう。鞍部に一旦降りてからの登り返しは急傾斜の雪溪で、スリップしないように、刻まれたステップを慎重に辿る。9h02mに登頂。2356mで今回の最高峰だ。ここからは尾瀬ヶ原とその先に立つ至仏山の眺めが見事。武尊山や景鶴山, 越後三山, 平ヶ岳なども同定できる。遠く飛騨山脈や妙高・火打山まで見通せるのは素晴らしい。俎嵓を振り返ると山頂には団体さんが到着して大混雑していて、行列がこちらの柴安嵓に向かって攻めてくる。静かな山頂はもう望むべくもないだろうから、せっかくの眺めが惜しいけど俎嵓に引き返そう。雪溪の斜面で団体さんをやり過ごし、俎嵓に登り返す。団体さんで混みあう山頂は阿鼻叫喚の様相を呈しているし、苦手なタバコの煙も漂ってくるので、早々に下山する。 |
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急峻な岩場を慎重に下り、ミノブチ岳のケルンを9h58mに通過。数多ある雪田の脇にハリブキやコバイケイソウが新芽を出し、サンカヨウやエンレイソウが開花する道は歩いていて楽しい。やがて傾斜は緩やかになってくるものの、残雪と雪解け水の流れのあるぬかるみの道は歩きにくい。だらだらと長い下り坂にうんざりしてくる。 |
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やがて深い残雪のコメツガの森の中を歩くようになる。赤ペンキやテープや踏み跡が多いので道迷いの心配はないが、これらの目印がなければ2週間前の黒岩山南西面の様相のようだ。尾瀬沼を周回する木道に11h30mに出ると、尾瀬沼方向に視界が開けてハッとする。浅湖湿原に寄り道するとミズバショウの群落がちょうど見頃。 |
散策する人の多い木道を大江湿原方向に進む。大江湿原は広々とした光溢れる風景で開放感たっぷり…なのだが、沼山峠方面からの観光客の行列を見てギョッとする。とてものんびりできる雰囲気ではない。大江湿原から小淵沢田代に抜ける道を進もうかという考えを捨て、長蔵小屋から小淵沢田代へ進むことにしよう。 |
ビジターセンターに11h44mに到着。巨大化し始めたミズバショウとリュウキンカの咲く沼畔から、燧ヶ岳の眺めが見事。観光客でごった返しているのに眼をつぶって昼食。 |
12h40mに出発し、小淵沢田代を目指す。尾瀬沼ヒュッテ脇を過ぎると喧騒はどこへやら、静かな森の中の急登を黙々と歩む。峠点には、「展望台5分」という標識があるので行ってみる。尾瀬沼を擁する燧ヶ岳を望むことができるが、樹木が伸びてきて見通しは「展望台」というほどではなかった。小淵沢田代へ下る木道で休憩している5人の中高年パーティから、「この道はどこへ続くんですか」と尋ねられる。「小淵沢田代に行きますけど」と答えると、「大江湿原ではないのですか」と聞かれる。まあ、すぐ先にある丁字路を左に進めば大江湿原にも行けますけど、地図を持っていないのかな? |
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小淵沢田代から先は、いよいよ今回の山行の核心とも言うべき前回敗退のルートであり、緊張感が走る。背丈を越える笹の生茂る、白樺などの雑木林の道は、刈り払いされているし残雪もないので道は明瞭。それでも、地形図と磁石で常にルートを確認しながら進もう。 |
14h05mに、大清水への道が分かれる丁字路を通過。緩やかな登りを東へと進む。14h18mに送電線直下の只見幹線竣工記念碑に到着。送電線は目障りだが、このルートにあっては貴重な目標物でもある。送電線に沿って開けた笹原となって視界が開けているので、小休止して水分と糖分を補給。 |
台地状の袴腰山の北面を巻くと、樹間から目指す赤安山、そして問題の黒岩山を望むことができ、「よーし、待ってろよ!」と心の中でつぶやく。赤安山へ続く道の二つ目のコルにが赤安清水で、15h25mに到着。道の脇にある二張分程度の平らな幕営適地にテントを張る。水場は、ロープの付けられた北側の崖を下ったところにある。懸垂下降の技術を要する水場なんて初めてだ。湧いている水は冷たくてとても美味い。3リットルを汲みあげ、テントに戻って午睡する。 |
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