桃と御坂山塊

御坂山塊 釈迦ヶ岳・黒岳 山行記録

2004年4月10日


毎年4月中旬に心待ちにしている風景がある。甲府盆地の桃の花だ。桃の花は近くで見ても美しいものだが、桃の産地である甲府盆地では一面を桃色の絨毯に染め上げる様子が見事だ。この絨毯を高見してみたいと、御坂山塊の釈迦ヶ岳 (1641m) に登ってみた。森林限界以下の御坂山塊にあって釈迦ヶ岳は岩峰で眺めが良く、甲府盆地を見下ろせる絶好の展望台である。神座山 (1474m) から黒岳 (1793m) まで結ぶと、ちょうど日帰りハイキングに適した行程が組める。

武蔵境4h43m−(中央線)→ 石和温泉駅6h35m/バス停7h00m−(富士急行バス)→ 栗合7h15m/7h30m −(芦川村営バス)→ 鳥坂トンネル8h00m → 鳥坂トンネル上の峠点8h18m → 神座山9h46m → 釈迦ヶ岳11h00m/12h00m → ドンベエ峠12h40m → 黒岳13h55m/14h15m → 御坂峠14h50m → 三ツ峠入口15h35m

経路図はこちら

previous山行記録一覧へ

桃と御坂山塊

桃畑の向こうに御坂山塊

毎度おなじみ、4h43m武蔵境発の中央線始発で西へ向かう。笹子トンネルを抜けると甲府盆地の向こうに南アルプスの山々が望め、好天を約束してくれる。期待の桃の花はちょうど満開。春日居付近からは、桃畑の向こうにこれから歩く神座山(じんざさん)・釈迦ヶ岳・黒岳の稜線、それに富士山が見えてワクワクする。

石和温泉駅から鳥坂トンネルまでバスを使う。芦川村営バスの始発は石和温泉まで来てくれないので、栗合まで富士急行バスで行ってから乗り継ぐ必要がある。しかし富士急行バスの停留所が駅前に見当たらない。タクシーの運転手に尋ねると、富士急行バスは石和温泉駅までは来ない、南に進んで二つ目の信号が国道411号線で、そこにバス停があると言う。二つ目の信号って、見えないくらい遠いんですけど…10分以上歩いてようやくバス停にたどり着いた。

桃の花

白峰三山と桃の花

芦川村営バスの車窓

芦川村営バスは桃畑を行く

バス停で出会った単独行の中年女性から話しかけられる。私の行程を昨年秋に歩かれたそうで、いろいろアドバイスを頂いた。今日は大栃山(マニアックな山!)に登るそうで、かなりの達人のようです。栗合からの芦川村営バスは貸切状態。御坂町の桃畑の中を縫うようにゆっくりと走るので、十分お花見ができてしまった。なんだか、このままお花見をして帰ってもいいような気になるが、体脂肪率を下げるためにもちゃんと山歩きをしよう。

8h00mに鳥坂トンネル入口でバスを下車。準備体操をしていよいよ歩き始めだ。峠まではコンクリートの道だが、そこに土砂や落ち葉や朽ち木が堆積している廃墟状態なので却って歩きにくい。でも野鳥のさえずりが響く中を歩くのは気分が昂揚する。8h18mに鳥坂トンネル上の峠に到着。

鳥坂トンネル

鳥坂トンネル

神座山

1276m峰から見上げる神座山

ここからの稜線上の道は登山道らしくなるが、踏み跡も薄く、人通りがほとんどないようだ。ミズナラやブナなど広葉樹の落ち葉や枯れ枝が深く積もり、腐葉土に変わるのを待っている、フカフカした道である。10分ほどの急登でNHKの無線中継機が建つ小ピークに出る。樹林越しに悪沢・赤石岳や白峰三山が白くまぶしい。小さなアップダウンを繰り返し、1276m峰を9h03mに通過。神座山を望めるポイントだ。シャツ一枚でも暑いくらいの陽気だが、空気が乾燥しているので汗をかかず快適だ。日差しが強いので日焼け止めを塗り、サングラスもかける。

枯葉そっくりの蝶を発見。春の訪れもここまで来ている。稜線には雪があるかと思ってスパッツやアイゼンまで持ってきているが、全くの杞憂でぬかるみさえない歩きやすい道だ。いつもなら心拍数毎分90程度を維持するのんびりペースで歩くところだが、夏に向けて体脂肪率を落とすべく、LT(乳酸性作業閾値)に近い毎分120程度までペースをあげてみよう。なるべく早く、展望のよい釈迦ヶ岳山頂に到着したいし。

枯葉を擬態した蝶

枯葉を擬態した蝶。キタテハかな?

9h46mに標高1474mの神座山に到着。富士山の眺めが見事。釈迦ヶ岳のピラミダルな山容や、その奥の黒岳が見える。休憩して眺めを楽しみたいだが、8人くらいのグループがレジャーシートを広げて騒々しくおしゃべりしているので、さっさと立ち去り歩みを進める。

神座山から釈迦ヶ岳

神座山から眺める釈迦ヶ岳(左)と黒岳(奥)

一旦1430mまで下るとほぼ平坦な稜線上の散歩道。樹林の中から目指す釈迦ヶ岳の岩場が見える。1522m峰への急登は南面が伐採されているため、富士山や節刀ヶ岳、それに赤石山脈の山々が見事だ。写真を撮りまくる。アブラチャンダンコウバイ(2004.4.16訂正)の黄色い花も、枯葉色の登山道の中にあってかわいい。やがて岩場っぽい釈迦ヶ岳への最後の登り。両手両足を使うので負担が分散されるから岩場は好きだ。危険な箇所もあまりないし。後ろを振り返ると八ヶ岳や、遠く槍・穂高連峰まで見通すことができる。2週間前に歩いた七面山のナナイタガレや八紘嶺も確認できて、感慨深い。

南西方面の眺め

1522m峰への急登から南西方面

ダンコウバイ

ダンコウバイの花。アブラチャンと勘違いしてました。

七面山・八紘嶺

七面山・八紘嶺

赤石・悪沢

赤石岳と悪沢岳

北東方面

釈迦ヶ岳から北東方面

南方面

南方面

北西方面

北西方面

釈迦ヶ岳に11h00mに登頂。山頂からは360°の大展望だ。パノラマ写真を撮りまくる。南側を見下ろすと、期待通り甲府盆地が桃色に染まった様子が見える。花から遠く離れてこそ俯瞰できる眺めだ。

槍・穂高連峰

霞を突いて槍・穂高連峰

甲府盆地

甲府盆地は桃色の絨毯

記念撮影

富士を背に記念撮影

ここでお昼ご飯にしよう。山頂の混雑を避け、騒音の届かない南側崖っぷちの岩に腰掛けて準備。今回のメニューは加工食品に頼っている。マカロニを茹でてカルボナーラソースをかけた怪しげなパスタ料理。茹で汁はミネストローネに再利用。富士山に向かい合いながらの食べる幸せ。食後にドリップコーヒーとシフォンケーキを味わう。

昼食

怪しげなメニュー

富士山

富士山が間近

12h00mに黒岳に向けて出発。ドンベエ峠に向かってなだらかな下り坂を進む。山頂を離れると野鳥のさえずりが再開。しかし、先行する若い女性達の騒々しいパーティに追い付いてしまうとさえずりが止んでしまった。追い越せる人数でもないので間隔を空けてゆっくりと歩き、ドンペエ峠まで我慢しよう。

ゴジュウカラ

ゴジュウカラ

ゴジュウカラ

ゴジュウカラ

シジュウカラ

シジュウカラ

エナガ

エナガ(?)

カタクリの芽生え

カタクリの芽生え

12h40mにドンベエ峠を通過。多くの人はここに車を停めて釈迦ヶ岳に入山するようで、女性たちのパーティも車に乗り込み帰途に着こうとしていた。黒岳へ進む道は人通りが少なく、静寂さを取り戻す。1498m峰付近のなだらかな林は、こういう場所にテントを張って一夜を過ごすのも悪くないな、と思わせる。野鳥のさえずりが声高い。樹を逆さに降りてくるゴジュウカラの写真を撮ろうとすると、こちらの気配を察して逃げてしまう。ヤツが樹の向こう側にいる間に近づく。幹の手前側に現れた時に動くと逃げられてしまう。まるで「だるまさんがころんだ」をしているようだ。あっ、あの赤と黄色の模様が鮮やかな大きい鳥は何だろう?キレンジャクかな、でも滅多にいないはず。カメラを向ける前に逃げられてしまったのは残念。野鳥の声を聞く度に立ち止まって姿を探しているものだから、登りのペースは随分ゆっくりだ。

山頂に近づくと淡雪が残っていて道がぬかるんでいるが、それもわずかな間。13h55mに御坂山塊最高峰の黒岳に登頂。樹林に囲まれた山頂はあまり展望が良くないが、南に200mほど行ったところに展望台があって、河口湖と富士山の迫力ある姿を見ることができる。

展望台からの富士山

黒岳展望台から河口湖と富士山

黒岳から御坂峠までの下りはなだらかで、線状凹地に落ち葉が降り積もった快適な道だ。植生に馬酔木が散見されるようになる。ヤマガラが地面に餌を探しエナガが枝から枝へ渡る様子を眺め、コジュケイの「チョットコイ、チョットコイ」という声に耳を傾けながら、残りわずかとなった今日の山歩きを惜しむように楽しんだ。

ヤマガラ

ヤマガラ

エナガ

エナガ

エナガ

エナガ

御坂峠に14m50mに到着。三ツ峠入口でのバスの時刻は15h52mなので、ここからの下りはあまり道草をくっているわけにも行かない。やや急ぎ足で下る。傾斜が緩やかなつづら折れで、段差がほとんど無く歩きやすい、よく整備された道だ。国道137号線から聞こえる車の騒音がだんだん大きくなるのを道のりの目安としてペース配分し、15h35mに新御坂トンネル出口にある三ツ峠入口バス停に到着。交通量の多い国道沿いから少し離れた場所でコーヒーを淹れ、河口湖行きのバスを待ちながら今日の山歩きを思い返した。


感想やコメントの書き込みはこちらへどうぞ
初出 : 2004年4月11日, 最終更新日 : 2004年4月16日

ページの先頭へページの先頭へ

山行記録一覧へ山行記録一覧へ