仙丈ヶ岳・北岳 山行記録 #1/22004年6月19 - 20日 展望やお花畑が見事な北岳は人気の山で、登山口の広河原までバスや自家用車でアクセスできるので夏は混雑します。ところが昨年から広河原への林道が土砂崩れのため不通になっており、バスも運休中ということもあって、北岳がはるかかなたの山という状態が続いていました(道路の開通とバスの運行状況については南アルプス市のサイトをご覧下さい)。この6月は、登山者が少なく静かな北岳を堪能する好機と考え、折しも固有種キタダケソウの開花期であり、再会を期して歩いてみました。前夜に長野県長谷村の仙流荘に着き、長谷村営バスの始発を利用して北沢峠から出発すれば、仙塩尾根を通って北岳山麓の両俣小屋までたどり着けます。 |
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第0日 (6月18日) 中央道府中バス停18h41m−(JRバス・南アルプス号)→ 南アルプス登山口・仙流荘22h40m 第1日 (6月19日) 仙流荘6h30m−(長谷村営バス)→ 北沢峠7h20m/7h25m → 大滝頭(5合目)8h50m → 小仙丈ヶ岳9h46m → 仙丈ヶ岳10h50m/11h20m → 大仙丈ヶ岳11h44m → 苳ノ平12h57m → 伊奈荒倉岳13h48m → 高望池13h55m → 独標14h33m/14h55m → 横川岳15h15m → 野呂川越15h30m → 両俣小屋16h00m |
JRバス「南アルプス号」は府中バス停を18h41mに発車するので、仕事を終えてから慌てて帰宅し、荷造りを済ませてあるザックを背負って自転車を漕ぐ。バス停に18h37mに到着して待つ。バスがなかなか来ないので「乗り遅れたか」と心配になったが、20分以上遅れて到着。乗客は12人で、そのうち登山者は3人だけであった。諏訪南インターチェンジで国道に降り、ミセスハイジさんがお住まいの茅野市を通って杖立峠を越え、22h40mに仙流荘に到着。 |
バスが走り去ると一面真っ暗で、どこに無料休憩所があるのか分からない。ランプを携えてあちこち探し、ようやく休憩所を発見。一緒に降りた二人の登山者に声を掛けて場所を教える。他に利用者もいないので広々と使える。マットと寝袋をありがたく使わせてもらう。台風6号の影響が心配なのでラジオで23hのニュースと天気予報を聞いて就寝。 |
いつも運転手さんの案内は地質・地勢学や動植物の生態などの教養溢れ、興味深い。6回くらい乗っているけど、毎回新たな話題を仕入れているので飽きることがない。7h25mに北沢峠に到着。降りて準備体操を済ませると早々に出発。小仙丈尾根のコースはもう6回目で勝手が分かっているので、ペース配分を最適化できる。2合目までの登りはひたすらゆっくりと。2パーティが追い越してゆく。樹間から遠く槍・穂高連峰が望める。 |
8h50mに大滝頭を通過。この辺りから眺める北岳は尖ったピラミッドで格好良い。急登をこなし9h14mに森林限界に出るときの開放感は素晴らしい。ハイマツの緑と雪溪の白、それに青空のコントラストが見事だ。 |
振り返ると、鋸・甲斐駒・早川尾根・鳳凰三山が迫り、その奥には八ヶ岳が顔を覗かせる。足元に点在するコイワカガミやシナノキンバイは色鮮やかだし、ハクサンイチゲとミヤマキンバイは大群落を形成している。 |
小仙丈ヶ岳に9h46m到着。ここからの小仙丈沢カールの眺望は見事。ラテラルモレーンをハイマツが縁取りしていて分かりやすい。それにしても、6月なのにこんなに雪溪が消えているのは驚き。 |
30分ほど登ったところで、山頂直登ルートを外れて仙丈小屋への分枝を進む。薮沢カールのターミナルモレーンを観察するためだ。 |
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小泉武栄・清水長正編「山の自然学入門」(古今書院)によると、ターミナルモレーン(端堆石堤)とは氷河が削った岩塊・礫・土砂・粘土が氷舌端(氷河の先端)に堆積物として残されるもので、薮沢カールにみられるそれは三日月形のくっきりとした土手が形成され、ターミナルモレーンとして典型的なものだという。氷河が消失する前に、ここを末端として停滞したことを示すそうだ。仙丈小屋がすぐ側に建っているのは、せっかくの景観を台無しにしていてちょっと残念。 |
山頂への急登に取り組む。地蔵尾根の分岐には、ミヤマキンバイとオヤマノエンドウが咲き誇る風衝草原が広がっている。稜線の登りではキバナシャクナゲも見事。 |
10h50mに仙丈ヶ岳に登頂。今年初めての3,000m峰だ。360°の展望に圧倒され、写真を撮りまくる。11h20mに出発。 |
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大仙丈ヶ岳へ続く多重山稜には凹地に雪溪が残る。大仙丈沢カールにもターミナルモレーンが観察できる。大仙丈ヶ岳を11h44mに通過。そこから下った多重山稜の地形をハイマツと湿生植物が彩り美しい。 |
コイワカガミやイワウメやツガザクラやミヤマキンバイやチングルマなどが咲き誇る稜線歩きは楽しい。ミヤマオダマキはまだ蕾。正面の北岳と間ノ岳に見入ったり、時々振り返って大仙丈沢カールを眺めたり。 |
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しばらく続いた稜線からの展望も、森林限界下に入っておしまい。ダケカンバやシラビソの林の中を進む。12h57mに高茎草原である苳ノ平に到着。コバイケイソウやマルバダケブキが密生するなかにキバナノコマノツメが黄色の彩りを添えていて美しい。 |
再び苔むす樹林帯に入り、黙々と歩く。仙塩尾根北部を歩くのは2回目なので、コースのツボを知っているためペース配分が適切で、疲れることがない。あちこちの幕営適地には、3年前にはなかった「テント禁止」の看板が立てられている。こういうところに幕営したい気持ちはよく分かるが、国立公園内なので禁止は仕方ない。13h48mに伊那荒倉岳を通過。そこからわずかな下りで高望池に13h55mに到着。池はまたも干上がっているが、コバイケイソウが密生する美しいサイトだ。幕営すると楽しいだろうけど、ここにも「幕営禁止」の看板。時間に余裕があるので、水場に行って見る。数十メートル下ったところの流れは水量豊か。見た目にはちょっとCODが多そうだけど、冷たくて美味しい水だ。1リットルを詰めて高望池に戻る。 |
高望池から二つ目のピークが露岩の独標であり、14h33mに到着。仙塩尾根北部の全景が見渡せる。両俣小屋の位置や、左俣から中白峰沢ノ頭を経て北岳に至るルートの位置関係が把握できる。気分が良いし時間に余裕があるので、大岩の上に横たわってのんびり。14h55mに再起動。 |
それでも野呂川の川辺に15h55mに到着。はるか間ノ岳を見上げ、「こんなに下ってしまったのか」ということを実感する。野呂川沿いの散歩道はケショウヤナギが美しく、歩いていて楽しい。16h00mに両俣小屋に到着。 |
小屋の管理人さんに幕営を申込むと、「気象通報の時間なので、先にテント張ってね」と言われる。それでは私もテントを設営しながら、台風6号の動きが気になるので気象通報を聞いておこう。予想よりも動きがゆっくりなので、明日はまだ影響が少なそうなので安心する。設営後に管理人さんが申込書を持って来てくれたので、幕営料400円を払う。明日、北岳に登るという予定を告げると、今日北岳に行ってきたお客さんが小屋にいるので、様子を聞いてみたら、と言われる。ありがたい、左俣大滝までの河原歩きの様子とか、キタダケソウの開花の様子など、貴重な情報をいろいろ伺いました。 |
キャンプサイトのテーブルで夕食。サラダスパゲティを茹でてレトルトのカルボナーラソースをかける。茹汁はミネストローネスープにし、自分へのご褒美でカマンベールチーズも投入する。両俣小屋の飼い猫がやってきて、「何かくれよ」という顔つきをするので、カマンベールチーズをひとかけら与えると、不味そうに食べた。 |