大栃山

大栃山 山行記録

2005年4月16日


御坂山塊にあって北に突出した位置にある大栃山 (1415m) は、桃の開花期に甲府盆地が桃色に染まる様子を見下ろすことのできる展望台です。昨年、御坂山塊の釈迦ヶ岳を歩いた際に気になっていた山で、同じ頃にピカリさんが歩かれたレポートを拝見して、是非行って見たいと考えていました。国土地理院1/25000地形図では道が記されていない山ですが、檜峯神社からトビス峠を通って山頂に至るルートはよく整備されています。山頂から北西に派生する尾根は花鳥山一本杉まで続くマイナールートで、人に会うこともほとんどなく静かな山歩きを楽しむことができます。

武蔵境4h43m−(中央線)→ 石和温泉駅6h35m −(徒歩10分)→ 石和温泉入口バス停7h10m −(富士急バス)→ 檜峯神社入口7h34m → 檜峯神社8h38m → トビス峠9h03m → 大栃山頂9h41m/9h55m → 1086.4m三角点10h35m → 609m標高点11h40m → 花鳥山一本杉11h47m

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中央線・山梨市付近の車窓

山梨市付近の車窓に広がる桃

4h43m武蔵境発の中央線始発で石和温泉に向かう。高曇りの天気も笹子トンネルを抜けると青空が広がるようになってまずまずだが、春霞で赤石山脈の遠望が得られない。御坂山塊の稜線もぼんやりと見えるだけだ。これでは、山頂から甲府盆地の桃の絨毯を見下ろすのは期待薄だな。今のうちに中央線の車窓から桃を眺めておこう。

石和温泉駅から富士急行バスのバス停まで800mほど歩く。少し遅れてきた7h10m発のバスに乗り、30分ほど揺られながら、車窓にだんだんと大きくなる大栃山を見上げる。檜峯神社入口で下車。山門に満開の桜が美しい。

檜峯神社入口

檜峯神社入口

ホオジロ

ホオジロ

コンクリート舗装された林道を檜峯神社に向けて歩く。ホオジロの囀りを聴くと、久々の山歩きにウキウキした気分になる。行く先に釈迦ヶ岳の非対称な山陵を望み、やる気がでてきた。

釈迦ヶ岳を望む

彼方に釈迦ヶ岳を望む

神座山川沿いの林道

神座山川沿いの林道

鬱蒼とした檜林の中、神座山川の清流を見下ろしながら歩くのは楽しい。結構急な傾斜で、4 kmの道のりの間に標高を480mほど稼ぐ。途中に湧き水を流す筧もあり、掬って飲むとミネラル分たっぷりといった水でうまい。

湧き水

湧き水

檜峯神社の湧き水

檜峯神社の湧き水

標高1090mの檜峯神社に8h38m到着。山中にあって立派で厳かな神社だ。筧に渡した清涼な水を飲むと清々しい気分になる。駐車場には10台くらいの車が停まっていて、出発の準備をする中高年のグループが静寂をぶち壊しているのが残念だ。「ブッポウソウと鳴くのはコノハズクであることが明らかになったのはこの地である」という旨の立て札があり、興味深い。コノハズクに会うのは難しいかしら。神社にお参りし、気を取り直して出発。

檜峯神社

檜峯神社

カタクリ

カタクリ

トビス峠に向かう道ではカタクリの群落が見事だ。15分ほどの道のりなのに、写真を撮りまくって随分時間を食ってしまうが、今日はそんな山歩きの日だからいいのだ。

カタクリの群落

いっぱい咲いてました

トビス峠

トビス峠に到着

9h03mにトビス(鳶巣)峠に到着。釈迦ヶ岳方面の道を左に分け、右の大栃山方面へと向かう。 急登を少しだけこなすと、すぐに道は平坦になる。山頂まであと標高差100mのところで、なだらかな稜線をのんびりと歩く。ヒガラやヤマガラの囀りがにぎやかで。つい足を止めて姿を追ってしまう。

ヒガラ

ヒガラ

ヤマガラ

ヤマガラ

黄色い花が多数見られるが、これは花が枝に直接着いているのでダンコウバイだろうか。アブラチャンやサンシュユと似ているので、いつも判別に悩んでしまう。

ダンコウバイ

ダンコウバイ…でいいんですよね

大栃山山頂に9h41m到着。山頂には四角い方位盤が設置されていて、赤石山脈や八ヶ岳や奥秩父の展望に優れた場所だと示されているが、霞で全く見えないのは残念。甲府盆地もかろうじてうっすらと桃色が分かる程度だ。まあ、こういう日もあるさ。ゼリーとクッキーで栄養補給をしてから、北西尾根へと向かおう。

大栃山山頂

大栃山山頂

山頂方位盤

山頂方位盤

山頂から見下ろす甲府盆地

山頂から見下ろす甲府盆地は霞の中

北西尾根のルートは1/25000地形図には記載がないマイナールートだが、分かりやすい地形の稜線沿いを辿ればよい。テープや道標も要所に設置されているので、注意していけば道迷いの心配もないだろう。ただ、場所によっては踏み跡が薄く、薮っぽい箇所もあるので、地図と磁石は必携だ。高度計を山頂の標高1415mにセットして、まずは西に向かって下る。

ステンレス製指導標

ステンレス製指導標

マイナーピークを二つほど過ぎるとルートは北西方向に向かって急降下するが、その下降点にはステンレス製の「花鳥山一本杉へ120分」という立派な指導標が立っている。計画段階では地形図でルート取りはできても時間の読みには不安があって、余裕をもって3時間を見ていたところなので、この指導標の情報は助かる。

下降ルートではカケスの声がにぎやかだ。ヤマガラやヒガラも数多く、囀りの声を楽しみながら歩く。木登りするホンドリスにも会うことができた。野生動物に会えるのは歩く人の少ないマイナールートならではの楽しみだ。つがいのヒガラが、ダンスをするようにじゃれあいながら飛び回っている様子が微笑ましい。春は繁殖期なんだなぁ。

ホンドリス

ホンドリス

北西尾根の下降ルート

北西尾根の下降ルート

標高1230m付近に「花鳥山一本杉へ100分」の指導標が、右手の北方向を指している。うっかりすると西側へ派生する枝尾根に入り込みそうな場所なので、この指導標はありがたい。ここから北向きの下降はかなり急だが、ロープによるガイドがあって、そこそこ整備されている。標高1130mまで降りると道はほぼ平坦になって西北西へ緩やかに左カーブ。1140mピークに登り返すと「花鳥山一本杉へ95分」の指導標。ルートは再び北方向へと右折する。

1086.4m三角点のあるピークを10h35mに通過。ここにも「花鳥山一本杉へ85分」の指導標があり、それに従って北西方向へ右折する。少し下った標高1070m付近に「花鳥山一本杉へ80分」の指導標が北方向の右を指していて、西へ派生する枝尾根への迷い込みを防いでくれる。さらに、北へ延びた尾根の終了点標高990m付近にも「花鳥山一本杉へ70分」の指導標が西北西方向左側を指している。この辺りからツツジの花が散見され、単調な下り道に華を添えてくれる。

ツツジ

ツツジ

植林された斜面

植林された斜面

ここから標高770mまでは西北西に延びる尾根の稜線を進むが、指導標がしばらく現われず、踏み跡が薄く道が薮っぽいので少し不安になる。北に延びる尾根との間には、植林されたばかりの斜面が広がり、山菜がたくさん採れそうな魅力的な地形。北尾根の先には甲府国際ゴルフ場のコースでプレーする人も見える。

やがて、標高770mに立つ「花鳥山一本杉へ50分」の指導標脇を11h10mに通過。わずかに右折して北西に進路を取る。標高700mまで下ってから10mほど登り返したピークに「花鳥山一本杉へ40分」の指導標。ここまで下ると、甲府盆地の桃もよく見えるようになってきた。ルートは左折して西南西へ向かう。標高670m付近では北西へ派生する枝尾根に向かう道があって、西南西へ直進する道とどちらが正しいのか迷いやすいが、ここは西南西へと下る。大栃山方面の展望が得られる。その先標高650mに「花鳥山一本杉へ30分」の指導標があって、こちらが正しかったことが分かる。
指導標のポイントを右折して北西方向に下ると、標高609mポイントに農業用水の配水施設があり、ここからは1/25000地形図にも記載された道だ。奈良原集落の眺めが得られる。里山といった風景だ。

桃畑が近付いてきた

桃畑が近付いてきた

タチツボスミレ

タチツボスミレ

タラの木がたくさん生えているけど、ほとんど芽が摘まれているのは里が近いから仕方ないかな。タチツボスミレが数多く咲いている中を歩くのは楽しい。おや、ギョウジャニンニクがたくさん芽を出している。摘まれていないのは奇跡的かも。

ギョウジャニンニク

ギョウジャニンニク

花鳥山一本杉付近の桃畑

花鳥山一本杉付近の桃畑

11h46mに鉄製の柵を通り過ぎると花鳥ノ杉付近に桃畑が広がる。この辺りは観光客の桃畑への立ち入りを許可していることもあって、多くの人が散策している。大栃山北西尾根を歩き通した充実感を味わう。

一面の桃の花

一面の桃の花

桃畑から見上げる大栃山

桃畑から見上げる大栃山

タンポポの咲く桃畑には家族連れが桃の花見を楽しんでいる。手をつないでじゃれあうカップルもいて微笑ましい。春は繁殖期なんだなぁ。私もここで休憩して、クッキーとコーヒーを堪能しよう。桃色に染まった甲府盆地を見下ろしながらのんびりと昼下がりの日差しを楽しんだ。

桃のお花見

桃のお花見

花鳥山一本杉

花鳥山一本杉

桃畑の一角に立つ花鳥山一本杉は根廻りが8.67mもある巨木。説明看板には「樹勢は旺盛」とあるが、落雷によるものと見られる焦げ跡が痛々しい。バス停までの桃畑の中を散策。水彩画を描いている人もいて、いい風景だな。菜の花の咲く場所では色の対比も見事だ。

菜の花と桃の花

菜の花と桃の花

室部バス停で石和温泉行きのバスを待つ。ここには「星石」という石碑が展示されており、1607年のハレー彗星が描かれているそうだ。13h31mのバスで石和温泉駅に向かい、帰途に着いた。


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初出 : 2005年4月17日, 最終更新日 : 2005年4月17日

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