山頂の立ち木と太陽

雲取山・飛龍山 山行記録

2003年11月22 - 23日


奥多摩で最高峰の雲取山 (2017.1 m) とその隣にあって奥秩父に分類される飛龍山 (2077 m)は、奥多摩と奥秩父のそれぞれの特徴がよく現われている山々だ。雲取山には、鴨沢から七ツ石山を経るか三条の湯から登り始める人が多いが、奥多摩駅まで延々と続く石尾根(直線距離でも14 km)が魅力的に思えたので、標高340 mの奥多摩駅から歩き始めた。

11月22 武蔵境−(中央線)→立川−(奥多摩線)→ 奥多摩駅6h30m → 六ツ石山10h04m → カラ沢の頭10h50m → 鷹ノ巣山11h42m/12h15m → 高丸山13h21m → 千本ツツジ13h42m → 七ツ石山14h08m → 奥多摩小屋14h45m

11月23日 奥多摩小屋5h24m → 雲取山6h20m/6h45m → 三条ダルミ7h05m → 北天のタル9h10m → 禿岩9h55m → 飛龍山10h12m → 前飛龍11h05m → 熊倉山12h00m/12h20m → サオラ峠12h50m → 丹波14h00m

経路図はこちら

 

山行記録一覧へ

第1日(11月22日)

 

みなみひかわ集落

奥多摩の南氷川集落

武蔵境駅4h43m発の中央線に乗り、立川, 青梅と経て奥多摩駅6h24m着。車窓から見える朝焼けが好天を約束する。登り口がちょっとわかりづらく、神社の石段を登るのだということを見逃して100 mほど行き過ぎてから引き返す。100段ほどの石段の上にも人家があり、まだ生活圏といった中を登る。羽黒三田神社の脇を通過する際に、心の中で無事を祈って手を合わせる。

一旦車道に出て大きなヘアピンカーブを過ぎた後に再び山道へ。ここからが石尾根本番と言ったところ。快晴の空の下、コナラ(あるいはミズナラ?)やクヌギの落葉が深く積もった道を登る。このあたりの標高ではまだ紅葉も残っている。防火帯を兼ねているのか、道幅がとても広い。とても気持ちよく心が弾むのでついペースが上がりそうになるが、今日の行程は長いので、汗をかかないようゆっくりと登ることを心がける。

 

石尾根の明るい登山道

石尾根/三ノ木戸山付近の登り

9h10mに三ノ木戸からの道との合流点を通過。コースタイム2h10mのところを2h40mかかっている。歩き始めはこれくらいがちょうどいい。やがて南には富士山が見えてきた。7合目付近から上が白い、バランスのよい姿だ。狩倉山の脇を通過する辺りにはアザミが一面に穂を付けている。夏には見事なお花畑なのだろう。

 

穂を付けたアザミ

穂を付けたアザミが一面に

 

六ツ石山から南アルプスの展望

六ツ石山から南アルプスの展望

さらに拡大した写真はこちら

10h00mに六ツ石山への分岐に到着。山頂までものの5分なので、ザックをデポして行ってみる。うわ、甲斐駒から農鳥岳まで南アルプスが一望できる!甲斐駒のピラミッドが印象的だ。その左には大菩薩嶺から雁ヶ腹摺山に続く稜線。さらに左には富士山が見えるのだがちょうど立ち木が邪魔をする。

六ツ石山頂と富士山

六ツ石山頂と富士山

 

稜線から富士山

富士山を眺める稜線歩き

縦走路に戻って西をめざす。シャリバテ注意報が出てきたが、カラ沢の頭にてチーズとゼリーを摂取すると再び元気が湧いてきた。城山を過ぎると稜線は草原状の平坦な道となり、鷹ノ巣山も見える。富士山は裾野までよく見えるし、南アルプスも塩見岳や悪沢岳・赤石岳まで姿を現すようになった。ただ、稜線南側からガスが湧き始めた。

 

鷹ノ巣山はもうすぐ

山頂が草原状の鷹ノ巣山

 

悪沢・赤石・聖岳の眺め

聖岳まで見えてます。

11h42mに鷹ノ巣山到着。ここで昼食。シーチキンの油で餅を揚げた上にレトルトの中華丼をぶっ掛けた怪しげな料理。わずか5分でできるので、行動時間に余裕がない時によく作る。富士山を正面に見ながら食べる贅沢。南アルプスは聖岳までが見えた。
12h15mに山頂を発つ。急坂を下り切ったところに建っている鷹ノ巣山避難小屋は立派で清潔な小屋だ。

 

鷹ノ巣山避難小屋

鷹ノ巣山避難小屋

 

千本ツツジ山頂

千本ツツジへの登りにて

日陰名栗峰まで登るとまた下り。高丸山まで登るとまた下り。千本ツツジまで登るとまた下り…と、標高1600 - 1750 mの間を行ったり来たり。同じような急坂が何回も現われるので進んでいる気がしなくなる。かなりの急坂でも九十九折りになどせずに直登で道が付いているところが潔い。一応巻き道もあって山頂をパスできるのだが、せっかく石尾根縦走を決めたのだから尾根道をゆく。急登にあえぎながら「なぜ巻き道を選ばずに、いちいちピークを踏んでゆくのだろう」と自問する。ガスのため展望があるわけでもないのに。いろいろ理由を考えては否定していって、「バカだから」という答えだけが最後に残った。

七ツ石山に14h08mに到着。ここからは雲取山が間近に見えるはずなのにガスの中だ。今日の目的地・奥多摩小屋まではあとわずか。ヘリコプターが爆音を響かせて稜線ギリギリをかすめてゆく。奥多摩小屋の手前にヘリポートがあるのだ。ちょうど着地して飛び立つところに出くわした。

 

発進しようとするヘリコプター

奥多摩小屋手前のヘリポート

 

今晩の宿

ペットボトルはネコよけのためではありません。

ヘリポートのすぐ先にはテン場、そして奥多摩小屋がある。小屋の受付で幕営料400円を支払い、テン場に戻って設営。このサイトは芝草の上でふかふかして気持ち良い。夜も地面の冷たさをあまり感じないで済みそう。水場は5分ほど下ったところで水量豊か。出くわした夫婦と、水場で実を付けているマユミの木を一緒に愛でる。
テントに戻り、心地よい疲労感と共に寝袋に潜り込んで午睡する。目が覚めるともう19hで真っ暗。テントの外に出るとケモノの気配がして、緑色に光る二つ眼×3頭分がこちらを見ている。「ピーッ!」という甲高い声と共に走り去っていった。鹿であろう。テントに戻って夕食。マルタイ棒ラーメンに海草サラダをぶち込んで食す。22h頃までラジオを聴く。強い冬型の気圧配置で、東北・北陸は大荒れとの気象情報を聞き、今夜の寒さを覚悟しながら就寝。


第2日(11月23日)

3時頃一旦目が覚める。そこそこ寒いが芝草のおかげで快適。外を見るとオリオン座からおおいぬ座にかけて晴れている中を、ちぎれ雲が風に軽く空を流れている。1等くらいの流星をひとつ見てから再び寝袋に潜り込む。4h30mに起床。チゲスープに餅をぶち込んだ雑煮が朝食。体が温まったところでテントを撤収。日の出1時間前の5h24mに出発。ヨモギの頭へ登る途中で、東京方面の夜景の上に新月一日前の細い月が出ているのを見る。地球照がはっきりとわかる。後で気付いたが、この27時間後に南極で皆既日食を起こす月であった。

 

東京の夜景と細い月

月齢28.6の"Last Moon"

 

雲取山頂はもうすぐ

雲取山頂はもうすぐ

小雲取山への道で鹿の群れが走り去るのに遭遇。小雲取山を過ぎると雲取山山頂の避難小屋が見えてきた。もうすぐだ。霜柱をざくざくと踏んで山頂をめざす。6h24mに登頂。たくさんの登山者が、避難小屋のテラスや山頂でご来光を待っている。しかし流れてくるガスがときどき邪魔をする。

 

山頂から石尾根を見通す

山頂から石尾根を見通す

 

ガスを突いて日の出

ガスを突いて日の出

6h32mにご来光。ガスがオレンジ色に染まり、雲ノ平で見た「デカダンな夕日」の再現だ。山頂から見えるはずの富士山や南アルプスは雲の中。北方面はよく晴れているのに、肝心の南から西にかけては待っていても展望が開けそうにないので山頂を後にする。

デカダンな朝日

デカダンな朝日

 

飛龍山へ続く尾根

雲が頭を隠しているのが飛龍山

この先の飛龍山方面を見て、「遠いなぁ」と思うが、昨日石尾根を歩き通したことを考えれば、頑張らなくてもなんとかたどり着くだろう。三条ダルミに到着すると雲が退いて富士山が姿を現す。斜光線に陰影のついた素晴らしい山容だ。

 

三条ダルミからの富士

三条ダルミからの富士遠望

 

北天のタルから来た道を振返る

北天のタルから来た道を振返る

この先は奥秩父の領域でぐっと静かな道になる。コメツガに苔むす暗い森の道は奥秩父らしく、これまでの明るく開けた奥多摩の稜線とは対照的だ。7h50mに狼平の広々としたキャンプサイトを通過。北側はあまり展望が開けないものの雲は無く、遠くに浅間山の特徴ある台形を望むことができる。道は三ツ山を巻くとやや険しくなるが、崩落した沢には立派な橋が架けられている。シャクナゲが両脇に多く見られるのもやはり奥秩父らしい。6月にはさぞ花が見事であろう。北天のタルに9h10mに到着。休憩していると中高年夫婦が追いついてきて、「三条ダルミからコースタイム2h30mってウソですよね。1h50mで着いたのに」と話しかけてくる。お二人が健脚なだけだと思うのですが…。

 

飛龍山への道とシャクナゲ

飛龍山への道にはシャクナゲが群生

禿岩に9h55mに到着し、ザックをデポして飛龍山頂をめざす。ちょうど山頂から下りてきた中年男性に、「山頂までどれくらいですか」と尋ねると、「20分くらいかな。たいしたことない山頂だけど、途中霧氷がきれいだよ」と教わる。シャクナゲが密生する道を進むと飛龍山頂が見え、さらに進むと確かにシラビソの梢に美しく霧氷がついている。日差しで溶ける前に来れてよかった。10h12mに飛龍山頂到着。今回の最高峰であるが、展望もなくて達成感に乏しい。雲取山より高いのに不遇な山だ。それでも南には富士山を雲間からのぞくことができた。

 

シラビソの梢に霧氷

シラビソの梢に真っ白な霧氷

 

歩いてきた石尾根の眺め

歩いてきた石尾根の眺め

禿岩に戻って下山開始。前飛龍を過ぎたところの露岩では展望が開けている。遠方の富士山や南アルプスは雲の中で見えないが、これから降りてゆくミサカ尾根・熊倉山方面が見わたせ、その先には三頭山もそびえている。さらに降りたところからは、昨日歩いた七ツ石山から雲取山までの石尾根が見渡せる。昨夜幕営した奥多摩小屋のテン場も確認でき、感慨深い。

ミサカ尾根

これから進むミサカ尾根

前飛龍から降りる急坂は今回のコースで最も険しい道だが、慎重にゆけば問題ない。30分ほどの降下が終わると、緩やかな稜線をゆく。熊倉山に12h00mに到着。展望のあまりない山頂だが、ここで昼食。昨晩と同じマルタイ棒ラーメンで、これで手持ちの食糧はほぼ完食。サオラ峠へ続く道は、植生がブナや岳樺が中心となり、落葉が深く積もっていて快適。鞍部では踏み跡がどこか分からなくなるほど積もっている。展望がなくても落葉や植生といった別の楽しみを、山は提供してくれる。
サオラ峠では、中川神社の祠を新しい石造りのものに置き換えていて、丹波(たば)集落の人達が集まって奉納している場面に出くわした。大切に祀られている中川金治氏は明治時代に丹波山村の植林事業を進めた篤志家だということを、地元の方に教わった。

 

サオラ峠に祠を奉納する方々

中川神社に祠を奉納する方々

サオラ峠からはつづら折りの急坂を下る。すれ違うじっちゃん・ばっちゃんの一団も、中川神社参拝だそうだ。地元の方々がよく整備している道で、単位降下量あたりの労力が少なくて済む。ただ、落葉に隠れた松ぼっくりは踏むと転がるので要注意。明るい雑木林の中を急降下して14h00mに丹波集落に到着。子之神社にて、無事下山できたことを感謝して参拝。いい山旅であった。丹波バス停までは国道を10分ほど歩き、奥多摩駅行き14h20m発のバスを待つ登山者の列に並んだ。

 

たば集落近くの紅葉

丹波集落近くの紅葉


感想やコメントの書き込みはこちらへどうぞ
最終更新日 : 2003年11月24日

ページの先頭へページの先頭へ

山行記録一覧へ