霧島・韓国岳

霧島 山行記録

2005年6月5日


6月上旬の週末に鹿児島への出張を命ぜられた。ちょうど霧島連山にミヤマキリシマの群落が咲き誇る季節。鹿児島に出張するたびに空港から霧島連山の雄姿を眺めては、いつか歩いてみたいと思っていたので、この機会に訪れることにした。 霧島連山はいくつもの活火山が連なり、美しい成層火山の山容や、10個もの火口湖の景観を楽しむことができる。高千穂峰は日本書紀に天孫降臨の地と記された由緒ある峰であり、荒涼とした火山と展望が素晴らしい。高千穂河原から新燃岳と最高峰の韓国岳を経てえびの高原へ至る霧島縦走路は、ミヤマキリシマが咲き誇る緑の草原歩きが楽しめる。一日で両方を歩くのは欲張りで駆け足になってしまうのだが、九州の山を歩く機会は貴重で出張を利用する都合上日程が一日しかとれないので、前日に霧島神宮まで行って早立ちで対処することにした。

高千穂河原6h22m→ 高千穂峰8h10m → 高千穂河原9h40m/55m → 中岳10h58m → 新燃岳11h28m → 獅子戸岳12h08m → 韓国岳13h43m → えびの高原14h35m

経路図はこちら

previous山行記録一覧へ

霧島神宮前の民宿「きりしま路」に投宿し、5h00mに鳥の囀る声で目が覚める。朝食に作っていただいたお弁当を堪能して今日のエネルギーを補充しつつ、荷造りを済ませる。今回は出張を利用していることもあって山歩き用のザックは持ってきておらず、小さなデイパックとウェストパックとカメラポーチだけという出で立ちである。ウェストパックは、テント山行で使っているオスプレー・イーサー75の天蓋部分を外してヒップベルトを通したものであり、結構な容量がある。雨着や水や非常食やファーストエイドなどの最低限の装備だけであり、テントを携帯していないことに不安を覚えるが、まあ、人通りの多い霧島でビバークすることはないだろう。

6h00mに呼んでもらったタクシーに乗り、高千穂河原へと向かう。溶岩台地に密生した原生林のトンネルは素晴らしい景色で、左右をきょろきょろしてしまう。6h22mに高千穂河原到着。高千穂峰の稜線から日の出を眺める。霧島古宮址の鳥居で手を合わせてから、自然研究路を進む。

霧島古宮址と高千穂峰

霧島古宮址と高千穂峰

御鉢南側斜面

御鉢南側斜面

ミヤマキリシマ

ミヤマキリシマ

キイチゴや白い花を愛でながら舗装された道をしばらく進むと、視界が開け、赤い溶岩のザレた道となる。御鉢南側斜面をキリシマヤマツツジが桃色に染め上げて見事だ。こんな溶岩の斜面に耐えて咲いている姿は、美しさだけでなく強さも感じさせる。でもそれは、他種が勢力を増すまでの一時的な植生なのだろう。

軽石の礫が敷き詰められた斜面は足を置くそばから崩れるので歩きづらい。砂礫の海に浮かぶ島のような岩盤を選んで、急登をこなしてゆく。 7h18mに御鉢の火口縁に到着。噴煙を上げる火口内部は死の世界を彷彿とさせるが、そんな火口壁にもミヤマキリシマが群生している。地獄と天国が隣り合わせの光景。神話の舞台になっているのも頷けよう。

火口壁に咲くミヤマキリシマ

火口壁に咲くミヤマキリシマ

噴煙を上げる御鉢

噴煙を上げる御鉢

高千穂峰を見上げる

高千穂峰を見上げる

御鉢から一旦コルに降りて見上げる高千穂峰は迫力がある。岩塔や指導標の杭やにホオジロが留って、さかんに「一筆啓上つかまつる」と鳴いている。

ホオジロ

ホオジロ

御鉢を見下ろす

噴煙を上げる御鉢

火山岩のザレた急斜面をゆっくりと登り詰めてゆく。ときどき振り返って見下ろす御鉢の姿は素晴らしい。至る所に咲くミヤマキリシマに癒されながら高度を稼ぎ、8h10mに高千穂峰に登頂。

ミヤマキリシマの群落

ミヤマキリシマの群落

山頂は庭園のよう

山頂は庭園のよう

御鉢とミヤマキリシマ

御鉢とミヤマキリシマ

ミヤマキリシマの原

ミヤマキリシマの原

モデル撮影会

モデル撮影会

山頂の鉾と日章旗を奉納したケルンは鎖で囲って立ち入り禁止になっている。周囲のミヤマキリシマの群落に見とれて、写真を撮りまくる。中年のご夫妻が仲睦まじくツツジの園で写真を撮りあったりしているのが微笑ましい。奥様をモデルに、一枚撮らせていただきました。

高千穂河原へと往路を戻る。ザレた斜面を下るのは登るより難しい。ちゃんとした登山靴でなくローカットの靴なので、砂が入ってきて難儀する。この時間になると大勢の団体さんが列を成して登ってくるので、落石を起こさないように気をつけなくては…と思った矢先に、あっ、ハンドボール大の岩をうっかり転げ落としてしまった。「ラクーッ!ラークラークッ!!」と叫ぶ。団体さんが気付いてくれ、「ラクッ!」の警告を下に伝えてくれた。幸い落石は登山道から一筋外れて転がっていったので事無きを得たが、直撃したら事故は免れなかっただろう。大変申し訳ない。反省の念に落ち込むが、団体さんとすれ違ったときに「(落石を)知らせてくれてありがとう」なんて言われてしまった。すみません、私のせいなのに、優しいですね。

ホオジロ

ホオジロ

御鉢を過ぎる頃には登山者というより観光客風のグループ多数とすれ違うようになる。結構へばっている人もいるけど大丈夫かな。それでも皆、ミヤマキリシマの咲き誇る岩塊斜面にはひとしきり驚嘆の声を上げている。

ノリウツギ

ノリウツギ

キイチゴ

キイチゴ

ハルゼミ(?)

ハルゼミ(?)

自然研究路に9h16mに到着。回り道してキリシマヤマツツジの観賞ルートをゆく。この辺りの標高ではツツジは見頃を過ぎているが、タンナサワフタギやノリウツギが見事だ。地面に落ちて命付きようとしているハルゼミ(?)を見つけた。
9h40mに高千穂河原に戻ってきた。自家用車や観光バスが多数到着し、大勢の観光客でごった返している。喧騒の中ではあるが、パンなどを食べてエネルギー補給する。9h55mに霧島縦走路へと出発。

タンナサワフタギ

タンナサワフタギ

ミヤマキリシマに停まるホオジロ

ミヤマキリシマに停まるホオジロ

ヤマボウシやノリウツギなどを愛でながら石畳の道を登っていく。中岳に至る道は三分岐しており、その中で「ツツジコース」は意外に歩く人が少ないのでそちらを選択。この標高ではミヤマキリシマの見頃を過ぎているが、それでも鮮やかな株も残っていて、ホオジロが囀る中を歩くのは楽しい。

三分岐した道もやがて合流し、大勢の登山者列の中を進む。ミヤマキリシマが点在する高原の散策は楽しい。おや、ウグイスの声がする方を見ると、珍しく姿を人目にさらして囀っているではないか。ヤマボウシの梢に留って鳴く姿は可愛らしく、感激してしまう。

ヤマボウシとウグイス

ヤマボウシとウグイス

谷間にツツジの園

谷間に見えるツツジの園

中岳への急登に取り付く。登山者が多くて渋滞気味だが、持続可能なペースで丁度いいだろう。高千穂峰方面を振り返ると、谷間にツツジの桃色に染まった一角があることに気付く。あの辺りだけツツジの密生しているようだ。行ってみたら素晴らしい場所なんだろうな。

中岳山頂に10h58mに到着。山頂や火口クレーターに広がる開放的な草原の眺めは素晴らしい。クレーターの向こうには新燃岳が見えている。

中岳山頂の眺め

中岳山頂のパノラマ

中岳のクレーター

中岳のクレーター

遠望が霞んでいるために、一面のミヤマキリシマの原は、果てがないように思える。空想上の天国というのは、こういう場所に着想を得ているのだろうな。こんなところにテントを張って、ツツジを愛でながら日長過ごしてみたいものだけど、今日は先に進まなくては。

どこまでも続く

どこまでも続く

ツツジにまみれて

ツツジにまみれて

新燃岳までは木道が続いている。このあたりで「新燃岳萌え〜」などというボケは誰でも思いつくだろうが、突っ込んでくれる相方もいないので、「苗場山萎え〜」などと一人でボケ返す。

新燃岳の火口壁

新燃岳の火口壁

火口湖とミヤマキリシマ

火口湖とミヤマキリシマ

ツツジの縁取り

ツツジに彩られた火口縁を行く

緩やかな傾斜の階段をポクポクと登り詰め、新燃岳に11h28mに到着。 翡翠のような色をした火口湖を見下ろすことができて素晴らしい。火口の東縁を行く道は、左を見れば火口壁、右を見ればなだらかな草原、どちらもミヤマキリシマが点在していて言うことがない風景だ。満開の時期にここを訪れることができた幸運に感謝。

新燃岳の火口湖

新燃岳の火口湖

ツツジのトンネル

ツツジのトンネル

新燃岳の北端からは火口を離れ、潅木帯の中をゆく。コルを通過して獅子戸岳へ登り返す。12h08mに獅子戸岳を通過。この辺りは樹高が高く、ツツジのトンネルといった様相だ。

めざす韓国岳も霞を突いて見えるようになってきた。遠いなぁ。しばらく樹林帯の中を歩き続ける。ところどころに窪地があり、そこをミヤマキリシマが縁取っているのも美しい。

韓国岳の山容

韓国岳の山容

韓国岳の火口壁

韓国岳の火口壁

やがて韓国岳への急登に取り付く。新緑とツツジのコントラストが見事な斜面を見下ろしながら、結構疲労がたまってきた脚に喝をいれて登り詰める。13h34mに韓国岳の火口壁に到着。切り立った火口壁は高度感たっぷりで楽しい。山頂までは火口壁沿いに10分ほど進む。13h43mに韓国岳登頂。霧島山の最高峰である。

火口の規模も大きいけど干上がっている。ここはえびの高原から2時間足らずで登ってこれるだけあって、家族連れなどで賑わっている。小さい子でも頑張れば登頂の達成感が味わえる、いいところなのだろう。

韓国岳クレーター

韓国岳クレーターのパノラマ

えびの高原に向けて下山開始。満開のミヤマキリシマが、斜面を緑と桃色に塗りわける中を降りてゆく。さすがに7時間以上歩きずくめで疲れてきた。登山靴とそうでない靴の違いを痛感する。靴底こそビブラムソールだけど、体重をかけても曲がらない硬さがないと長時間の山歩きでは疲れてしまうのだ。出張を利用した山歩きでも、堂々と山の装備を持ってくるだけの図太さが必要だな。

硫黄の結晶

硫黄の結晶

見下ろすえびの高原が段々と近づいてきた。硫黄山に14h35mに到着。その名の通り、地面のあちこちに硫黄の結晶を見つけることができる。ここからは韓国岳火口壁の切れ込みが前面なので、まるで双耳峰のようだ。

硫黄山から韓国岳

硫黄山から韓国岳を見上げる

硫黄山からえびの高原までは舗装された遊歩道を行く。つつじヶ丘という、ミヤマキリシマで埋め尽くされた公園に立ち寄り、バス停にザックを下ろす。エコミュージアムセンターにて記念写真を撮ってから。15h31mのバスで帰途についた。

えびの高原から韓国岳

えびの高原から韓国岳を振り返る


感想やコメントの書き込みはこちらへどうぞ
初出 : 2005年6月26日

ページの先頭へページの先頭へ

山行記録一覧へ山行記録一覧へ