堂平山頂から笠山方面の眺め

奥武蔵 丸山・堂平山・笠山 山行記録

2003年12月14日


奥武蔵・堂平山頂に建つ国立天文台の堂平観測所は口径91 cmの光学望遠鏡で変光星や活動銀河などの観測を行ってきたが、関東平野の光害には勝てず、すばる望遠鏡がハワイに完成した後の2000年に閉鎖された。現役のうちに見学できなかったのが心残りで、今回歩いて訪ねてみた。奥武蔵の山々は標高は高くないが、快晴の空の下で展望は素晴らしかった。でも堂平山頂にはがっかり。

武蔵境4h43m−(中央線/武蔵野線/西武池袋線/西武秩父線)→ 正丸駅6h35m → 正丸峠7h46m → 旧正丸峠8h33m → 刈場坂峠10h00m (ツツジ山往復) 10h20m → 大野峠11h05m → 丸山11h32m → 堂平山12h50m/13h30m → 笠山14h08m → 白石車庫15h00m

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ぶこうさん

痛々しい武甲山の北面

中央線, 武蔵野線, 西武池袋線と乗り継いで6h35mに正丸駅に着く。冬至まであと1週間で日が短く、この時刻でまだ夜明け前である。雲一つ無い快晴の好天が期待できる。
大蔵山の集落の中、沢沿いの舗道をゆく。路面に霜が降りて滑りやすい。20分ほど歩くと集落を抜け、杉林の中の山道となった。渓流沿いの静かな道で、交通アクセスが容易なハイキングコースなのに他に誰も歩いていないのはちょっと意外。木の階段を登り詰めると正丸峠に7h46mに到着。武川岳が目前にそびえる。正丸峠には青梅秩父線の車道が通っており、廃虚と化したドライブインに興醒めする。
正丸山へは30分ほど稜線を登る。西に武甲山がそそり立つ。石灰岩採掘のために山頂直下まで北面が削り取られた姿が痛々しい。セメントの生産で栄えた秩父の陰の面である。その右側に見える特異な山容は両神山だ。

関東平野の眺め

関東平野の眺め

植生が杉林, 松林, コナラやクヌギの雑木林といろいろ変わる中の尾根道を進んで、8h33mに旧正丸峠を通過。その先にある露岩からは、東には関東平野が一望でき、新宿高層ビル群のシルエットが目立つ。ふと見上げるとヤマナシがたわわに実っている。結実した木を見ると嬉しくなるのはなぜだろう。落ちている実もたくさんあるので噛ってみた…が、味がほとんどなく一口で止めた。

ヤマナシの実

たわわに実ったヤマナシ

虚空蔵峠までは細かくアップダウンの続く尾根道。落葉が深く積もる中を歩く。北西には浅間山が白い姿をのぞかせる。空気の透明度が高い。
虚空蔵峠からは刈場坂峠に続く車道を進む。せっかく歩いてきた先が林道なのは、お釈迦様の掌を飛ぶ孫悟空のような気分で「なんだかなー」と思う。10分ほど車道を歩くと登山道が左側に分かれる。牛立久保は平坦で潅木のまばらな原地で、放射冷却が樹林帯より効くためか霜柱が厚い。刈場坂峠方面と大野峠方面への分岐に到着し、ザックをデポして刈場坂峠へ空身で行ってみる。

りんどう茶屋のある刈場坂峠は眺めが良く、筑波山, 那須連山, 日光連山, 谷川岳, 苗場山, 赤城山, 榛名山, 草津白根, 浅間山が一望できる。堂平山が手近にあり、国立天文台堂平観測所跡のドームも確認できる。ツツジ山に登ってみるが、展望のない山頂でただピークハントしただけ。りんどう茶屋に戻り、柚子かりんとうを買い求める。かりんとうを食べながらデポ地まで歩いていると、山歩きというよりただの散歩をしているような気分になってくる。

刈場坂峠から見る堂平山

刈場坂峠からの堂平山の眺め

大野峠付近で風待ちのパラグライダー

大野峠近くの斜面で風を待つパラグライダーたち

大野峠までの尾根沿いの道は結構アップダウンがあるのだが、並行する車道が常に見えるので、またも「なんだかなー」という気分になる。車道を歩いた方が早いし楽であろうから、合理的な人は車道をゆく方がいいだろうが、ダイエット登山には山道の方がよいのだ。カバ岳を通過して大野峠に11h05mに到着。
ここから5分ほど登った展望台の東屋では、パラグライディングを楽しむ人が4人ほどで風待ちをしている。堂平山付近でもたくさんのパラグライダーが舞っている。「ここから飛ぶんですか」と尋ねると、「風がないんだよね」と、待ちくたびれている様子。「もし興味があったら、講習会もやってますからどうですか」と言われるが、「まだ命が惜しいので、地べたを這いつくばります」と答えて立ち去る。本当はとても興味があるし、やってみたら面白いに違いない。多分病みつきになるだろう。そして、死ぬか大怪我するか全財産を注ぎ込むまでのめり込むかも知れない。やはり山歩きが私には分相応だ。

丸山山頂の展望台

丸山山頂の展望台

丸山方面と堂平山方面の分岐にザックを置いて、空身で丸山へ向かう。丹沢や富士山が見える急登を詰めると電波塔の立つ小ピークへに着き、そこからは平坦な稜線歩きだ。11h32mに丸山到着。標高960mで今回の最高峰だ。3階建ての立派な展望台は、多数の中高年ハイカーでにぎわっている。南を除いて完全な展望が広がる。南西には丹沢や奥多摩それに武甲山、西には両神山や奥秩父の山々とその奥に雪化粧した八ヶ岳。北から東にかけては刈場坂峠でも見た山々が連なる。秩父盆地の街並みもよく見える。この展望台には無料の双眼鏡が設置されているのも親切だ。空気が透き通った日の展望は見飽きることがない。山座同定で日が暮れそうだ。時間が押しているので後ろ髪を引かれながらデポ地に戻る。

丸山展望台から西側のパノラマ

丸山の展望台からのパノラマ [南西 - 北西]

南西方面・丹沢の眺め

南西方面・丹沢の山々

西側の八ヶ岳と両神山

西側の八ヶ岳と両神山

北側の浅間山

北側の浅間山

北側の上越国境の山々

北側の上越国境の山々

北東の日光連山

北東の日光連山

堂平観測所のドーム

堂平観測所のドーム

デポ地からわずかの下りで車道に出る。50分ほど車道歩きだ。ヘアピンカーブにもショートカットの登山道などがついていないので、忠実に車道をたどる。頭上をパラグライダーが舞っている。上昇気流に乗って、まるでトンビのように優雅だ。高篠峠を経て白石峠に到着。剣ヶ峰へは山道の登りで、電波塔の建つ山頂を12h38mに通過。木の階段を下りると再び車道歩き。程なく堂平山に12h50m到着。
堂平観測所跡は芝生の中にドームや一等三角点があるのだが、門が閉まっていて入れない。どーせ観測してないんだから、眺めの良い公園として開放すればいいのに。と他人事のような事をつぶやくくらいなら、天文台のエライ人に申し出てみようかな。

山頂の北側には芝生の斜面が広がり、大勢のパラグライダーが集結している。それでは芝生の一角で、山並みの光景とともにパラグライディングを見せてもらいながらお昼ご飯にしよう。サラダスパゲティを茹で、茹だったところにインスタントのミネストローネスープを投入して、スープスパゲティのできあがり。イタリア風ラーメンとでも命名しようか。

パラグライダーはもう店じまいのようで、撤収を始めている。その内の一人が、背負型巨大扇風機にエンジンをかけて、風圧で駈け回り始めた。爆音が山頂に響き渡る。しばらくは楽しそうにはしゃぐ様子を眺めていたが、いつまでたっても止めようとしないので騒音にいい加減にうんざりしてきた。パラグライダー仲間と見られる人に、「あの爆音を止めてもらえないですかね」と声をかける。
…無視である。もっと大声で言っても、一瞥はされるものの聞く耳を持たないようだ。隣にいた人に同じことを訴えると、「落葉を掃除してんの」と言う。

堂平山頂の斜面に集うパラグライダーたち

堂平山頂の斜面に集うパラグライダーたち

いろいろ聞くと、この芝生の一角は三年前からパラグライダー仲間が地主から土地を借り上げて、整備してきたのだという。私はその土地に勝手に入ってガスコンロを使い、メシを食っていたのであった。それは、知らなかったとはいえすまなかった。出て行けと言われないだけでも感謝すべきなのだろう。堂平山はもはやハイカーが自然を楽しむ場所ではなく、レジャーランドなのだ。がっかりして、今までの楽しい気分が蒸発してしまった。食後のコーヒーを楽しむ気にもなれず、13h30mに山頂を立ち去る。

笠山からの眺め

笠山からの眺め

13h50mに笠山峠まで降り、ザックを置いて笠山まで空身でピストン。14h08mに登頂。山頂は二峰あり、標高の低い西峰は北面の展望があり、樹林に囲まれて展望の無い東峰には笠山神社が建っている。神社に手を合わせてから笠山峠に戻る。緩やかな下り坂を20分ほど降りると車道に出て、さらに20分ほどで白石車庫バス停に15h00mに到着。すでに到着していた15h07m発の小川町行きバスに乗り込んで帰途についた。

白石車庫から見上げる堂平山

白石車庫から見上げる堂平山


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初出 : 2003年12月16日, 最終更新日 : 2003年12月18日

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